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この記事では、平成27年度 電験2種 2次試験 電力・管理 問2の過去問解説をします。
この問題は、送電端、受電端における無効電力制御の効果に関する論説問題です。
無効電力の制御によって、力率改善、電圧調整といった効果があることを知っていれば、回答できるようになります。
平成27年度 電験2種 二次試験 電力・管理 問2
電力用半導体を用いた静止形無効電力補償装置(SVC、STATCOM)について、次の問に答えよ。
(1)SVCとは具体的にどのような目的に用いられるか、系統側、需要側の事例をそれぞれ一つずつ挙げよ。
(2)SVCの代表的な方式であるTCRとTSCについて、それぞれの動作原理と制御の特徴を簡潔に述べよ。
(3)STATCOM(自励式SVCあるいはSVG)の動作原理を述べよ。あわせて、TCR方式のSVCと比較した制御の特徴を簡潔に述べよ。
試験センター 標準解答
解説は、小問(1)~(3)をまとめて行います。
小問(1)
系統側 | 設置点の送電系統の事故時の電圧維持による同期安定性を向上させるため。 配電系統の末端など,電源系統の弱い地域において,負荷変動などに起因する電圧変動を抑制するため。 |
需要側 | アーク炉,採石場のクラッシャー等の変動負荷による急激な電圧変動を抑制するため。 負荷で発生する無効電力をキャンセルして力率を改善するため。 |
小問(2)
・TCRは,サイリスタを用いてリアクトル電流の位相制御を行う方式で,誘導性(遅れ)の無効電力を連続的に制御できる。また,並列にコンデンサを接続することにより,進みから遅れの領域にわたる無効電力を連続的に変化させることができる。
・TSCは,サイリスタを用いてコンデンサの開閉を行う方式で,容量性(進み)の無効電力を制御できる。突入電流が流れない位相でオンオフ制御を行うため,無効電力は段階的にしか制御できない。
小問(3)
STATCOMは,自己消弧素子を用いた自励式変換器を用いることにより,進みから遅れまでの幅広い無効電力補償を,連続かつ高速で行うことができる。TCR 方式の SVC に比較して,系統電圧の低下時にも高い補償能力が得られるため,電圧安定性を高める効果に優れる。
解答・解説
TSCとTCRの回路図と動作原理
解図1に(a)TSCと(b)TCRの回路図を示します。
TSCは、スイッチでコンデンサの投入数を変えることで、段階的に遅れの無効電力を供給します。
TCRは、コンデンサと並列にリアクトルを設置し、サイリスタの制御角によってリアクトルから供給する進みの無効電力を調整することで、コンデンサの供給する遅れ無効電力を連続的に調整できます。
ちょうど、コンデンサで供給しすぎた遅れ無効電力の一部をリアクトルで消費し、打ち消すイメージですね。
(a)TSC |
(b)TCR |
解図1
STATCOMの回路図と動作原理
解図2にSTATCOMの回路図を示します。
解図2
STATCOMの構成は、電力系統から各相を引出し、そこにインダクタを備え、三相インバータを通してコンデンサに接続します。インダクタに流れる電流$\dot{I_a}$は、
$$\dot{I_a}=\frac{\dot{V_1}-\dot{V_2}}{jX_L}$$
であるので、インバータ出力電圧$\dot{V_2}$をPWM制御により調整すれば、無効電力を連続的に制御できます。
需要側で無効電力補償装置を使う場面と効果
受電端で無効電力を補償するのは、
- 力率改善
- 電圧変動抑制
を目的にすることが多く、特にTSR、TCR、STATCOMは電圧変動抑制の意味合いが強いです。
電圧変動$\Delta V$の近似式は、受電端電圧$V_r$、有効電力$P$、無効電力$Q$(遅れを正)、線路抵抗$R$、線路リアクタンス$X$とすれば、
$$\Delta V=\frac{PR+QX}{V_r}$$
であり、一般的に電力系統は$R$よりも$X$が大きく、無効電力$Q$に敏感に反応して電圧が変動します。
そのため、コンデンサなどの容量性負荷を接続し、受電点で遅れ無効電力を供給することで電圧低下を抑えます。
アーク路などの始動電流の大きい負荷が起動する際、遅れ無効電力を多量に消費し電圧が低下しフリッカが起こるので、遅れ無効電力を補償するためにも使用します。