【H29 電験2種 二次 電力・管理 問5】高圧配電系統が非接地方式である理由と配電ケーブルが採用されることによる配電系統に生じる問題の論説問題

平成29年度 電験2種 二次試験 電力・管理 問5

我が国の高圧配電系統に関して、次の問に答えよ。

(1)現在、我が国の大部分の配電系統は6.6kV三相3線式中性点非接地方式となっているが、我が国が従来から非接地方式を主体に発展してきた理由を次の観点から簡潔に説明せよ。
a 誘導障害の観点
b 保安の観点

(2)近年、配電線に電力ケーブルが適用される場合が増加しているが、これが原因となって生じるおそれがある配電系統側の問題点について次の観点から簡潔に説明せよ。
c 地絡保護リレーの動作
d 異常電圧の発生

(3)上記(2)のcとdの問題点に対し、両方に効果がある方法として、配電線の送り出し変電所側の対策を一つ挙げ簡潔に説明せよ。

解答・解説

(1)非接地方式を主体に発展してきた理由

(試験センター 解答)

a 6.6 kV配電線は通信線とともに架空線で同一電柱に施設されることが多く,大地帰路電流の大きい接地方式を採用すると通信線に対する電磁誘導障害が問題となってくる。このため,地絡電流の小さい非接地方式が採用された。
b 非接地方式によって地絡電流を小さく抑えると,高低圧混触時に低圧線の電位上昇を低く抑えることができ,感電や火災の危険性の低減につながり,保安の観点で有利であった。

(解説)

試験センター解答にある通り、配電線は電柱の上に載っていて、通信線と近い位置で施設されることが多いです。そのため、非接地方式とすることで、地絡電流を小さくし、通信線への電磁誘導障害を小さくします。
また、保安の観点では、高低圧混触事故時に低圧側の電圧上昇を小さくできる点があります。

解図1

解図1に示す通り、高低圧混触事故は、高圧側から見ればB種接地抵抗を通した地絡故障であり、地絡電流が流れます。

この時、低圧側の電位は接地抵抗×地絡電流になりますが、地絡電流が小さければ、この電圧上昇を小さく抑えることができ、保安の観点で有利になります。

(2)電力ケーブルが採用されたときの配電系統側の問題点

(試験センター 解答)

c 電力ケーブルの増加によって線路の対地静電容量が大きくなると,地絡発生時の零相電圧が小さくなり,また零相電流は非接地系で小さいことから,地絡保護リレーの動作において,所要の地絡検出感度を得るのに困難な場合がある。

d 非接地方式の配電系統では,間欠アーク地絡が発生すると,配電系統に異常電圧が発生するおそれがある。この場合,配電系統に電力ケーブルが多く適用され,対地静電容量が大きいほど異常電圧の発生のおそれが高まる。

(解説)

非接地系統は地絡電流が非常に小さく、地絡保護リレーの動作が不安定になります。

また、ケーブルの非接地系統における間欠アーク地絡については、コンデンサの進み電流遮断時の再点弧と似た現象になるので、イメージ図を使って説明します。
解図2に示す通り、地絡が発生したとき、仮に0[Ω]での地絡であれば、地絡点におけるケーブル電圧はGND電圧と同じになります。ある瞬間、電流0[A]の瞬間に地絡が解消したとすれば、ケーブルと地絡点とは電気的に切り離された状態になるので、
ケーブル側:線路電圧まで上昇
GND側:地絡故障解消直前の電圧が残る
となります。
つまり、ケーブルとGND間に電位差が残ることになります。

(a)地絡時 (b)地絡解消時

解図2

ケーブル系統であれば、対地静電容量が非常に大きく、抵抗分はほぼ無視できるため、地絡時には近似的に90°の進み電流が流れます。

例えば、解図3に示すように地絡電流が流れていたとすれば、地絡電流が0[A]になったときアークが消滅しますが、GND側は電圧波高値の最大で維持されます。

ケーブル導体はそのまま正弦波状に電圧が低下し最下点に達しますが、この時ケーブルとGND間にある導体は、電圧波高値の2倍の電圧が印加され絶縁破壊し、再び地絡電流が流れ、間欠アーク地絡となります。

解図3

(3)送り出し変電所側の対策

(試験センター 解答)

1台の配電用変圧器が受け持つ配電系統の負荷容量や対地静電容量が過大になった場合,配電用変圧器を新たに増設して受け持つ配電系統を分割する。

(解説)

本問は、

  • 零相電流が小さい状況における地絡の検出
  • 間欠アーク地絡の対策

の2点で解答すればいいので、試験センターの回答以外にも、接地変圧器(ブロークンデルタ)の設置も考えられます。

零相電流が小さいのであれば、ブロークンデルタ回路によって零相電圧を検出すればOKです。

接地変圧器とブロークンデルタ回路を解図4に示します。

送電線主回路に地絡電流$\dot{I_1}$が流れれば、Y結線を$\frac{1}{3}$ずつに分流し、さらにブロークンデルタ回路側には変圧比の逆数倍、すなわち$\frac{n}{3}\dot{I_1}$が流れ、制限抵抗$R_0$に電圧$\frac{n}{3}R_0\dot{I_1}$が生じます。

この制限抵抗に生じる電圧が零相電圧になり、この零相電圧をトリガーに地絡リレーを動作させることができます。

解図4

また、ブロークンデルタ回路は、制限抵抗で電圧$\frac{n}{3}R_0\dot{I_1}$が生じますが、これはブロークンデルタ各相の巻線には$\frac{1}{3}$ずつ分圧され、さらに送配電線主回路のY結線の各相には変圧比倍されるので、$\frac{n^2}{9}R_0\dot{I_1}$の電圧が生じます。

つまり、等価的に中性点接地抵抗が$\frac{n^2}{9}R_0$になります。

制限抵抗$R_0$の値をうまく調整すれば電圧と地絡電流の位相差の関係も調整でき、間欠アーク地絡への対応も可能となります。

解図5

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