【H30 電験2種 2次 機械・制御 問1】誘導電動機の始動方法に関する論説問題

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この記事では、平成30年度 電験2種 2次試験 機械・制御 問1の過去問解説をします。

機械・制御科目は計算問題が多く、本問は過去の例を見ても珍しい論説問題となっています。

内容的には誘導電動機の始動電流に関する問題で、そこまで難しくはないですし、試験対策という意味では知っておいて損はない問題です。

しかし、試験当日に「計算問題を2問解くぞ!」と構えたときに論説問題が出題されると、急には対応できない場合もあります。

あくまでも“試験当日”であれば、他の問題を見て解けそうな場合、あっさり捨ててしまうのもコツです。

平成30年度 電験2種 2次試験 機械・制御 問1

三相かご型誘導電動機の始動方式に関し、次の問に答えよ。

(1)数キロワット以上の中小容量の三相かご形誘導電動機を全電圧始動した場合、定格電流の$5$~$8$倍程度の始動電流が流れる。この始動電流によって電動機に関連する設備に生じる可能性がある問題点を二つ挙げよ。

(2)スターデルタ始動方式を用いた場合、始動電流をほぼ$\frac{1}{3}$にすることができる。その理由を述べよ。

(3)スターデルタ始動方式を用いて始動電流を低減させた場合の問題点を二つ挙げよ。

(4)インバータを用いて、周波数及び電圧を制御して始動し、定格速度まで連続的に加速するインバータ始動方式の優位な点を二つ挙げよ。

解答・解説

小問(1)大きな始動電流で設備に生じる問題

試験センター 標準解答

三相かご形誘導電動機を全電圧始動した場合,次のような問題が生じる可能性がある。

a. 過大な始動電流のため大きな電圧降下を生じる。

b. 過大な始動電流のためブレーカの動作を招く。

c. 電動機への配線の焼損の可能性がある。

d. 始動電流に対応するため定格設備容量より過大な設備容量が必要となる。

e. 始動時の機械的ショックが大きい。

f. 始動電流値に対応する保護機器を選定すると適切な保護機能が得られない

大きな始動電流が引き起こす問題

解図1に、三相かご形誘導電動機を示します。始動する瞬間、誘導電動機の滑りは$s=1$であるため、機械出力に当たる$\frac{1-s}{s}r_2’$の項は$0\left[{\rm Ω}\right]$となり、回路のインピーダンスが低下し、大電流が流れることがわかります。

これが、本問で問われている始動電流の課題です。

解図1

大きな始動電流が流れることによって、何が問題なのかというと、

a. 過大な始動電流のため大きな電圧降下を生じる。
→始動電流$\dot{I_S}$、配電線のインピーダンスが$\dot{Z}$であれば、誘導電動機に達するまでに$\dot{Z} \dot{I_S}$の電圧降下が生じ、これは始動電流$\dot{I_S}$が大きいほど電圧降下量も大きくなり、その分電圧低下が生じます。

b. 過大な始動電流のためブレーカの動作を招く。
→過電流保護のブレーカーが、大きな始動電流を検知して誤動作する可能性があります。

c. 電動機への配線の焼損の可能性がある。
→大電流が流れると、配線の抵抗値を$R$とすれば、$RI_S^2$の発熱が生じることになり、配線の焼損の可能性があります。

d. 始動電流に対応するため定格設備容量より過大な設備容量が必要となる。
→一時的な大電流に対応するため、大きな設備容量が必要になります。

e. 始動時の機械的ショックが大きい。
→誘導電動機の始動トルク$T_S$は、$T_S=3\frac{r_2’}{ω_0}I_S^2$であり、大きな始動電流は大きな始動トルクを生み出します。この始動トルクが、機械的衝撃となります。

f. 始動電流値に対応する保護機器を選定すると適切な保護機能が得られない
→一時的な始動電流での誤動作を防ぐために保護機器を選定すれば、本来検知したい異常を検知できなくなる可能性があります。

小問(2)スターデルタ始動方式による始動電流の低減法

試験センター 標準解答

スターデルタ始動方式は電動機の各相の巻線を,始動時にはスター結線とすること
によって相電圧が$\frac{1}{\sqrt{3}}$となり,始動終了後デルタ結線に切り換えることによって電源電圧を各相に供給する方式である。スター結線時はデルタ結線時と比較して電源から
見た見かけ上のインピーダンスが$3$倍となるので,線電流が$\frac{1}{3}$となる。

(別解)

スター結線時は相電圧は線間電圧の$\frac{1}{\sqrt{3}}$となるので線電流も$\frac{1}{\sqrt{3}}$となる。デルタ結線時の線電流は相電流の$\sqrt{3}$倍となる。両者の比をとると,スター結線時の線電流はデルタ結線時の$\frac{1}{\sqrt{3}}$となる。

デルタ結線全電圧始動とスターデルタ始動方式による始動電流の大きさの比較

試験センターの解答は、デルタ結線時はスター結線時と比較して抵抗が$3$倍になるので線電流を$\frac{1}{3}$倍に抑えられ、始動電流を小さくすることができることを要約しています。

解図1に、(a)スター結線時の回路、(b)デルタ結線時の回路、(c)デルタ結線時をY-Δ変換した回路図を示します。

(a)と(c)を比較すれば明らかなように、線間電圧$V$は共通のまま、デルタ結線時はインピーダンスが$\frac{1}{3}$倍になります。

以上より、デルタ結線はスター結線の$3$倍の電流が流れる、言い換えれば、スター結線はデルタ結線時の$\frac{1}{3}$倍しか電流が流れないので、始動電流を抑えることができます。


(a)スター結線時

(b)デルタ結線時

(c)デルタ結線時(Y-Δ変換後)

解図1

別解については、電圧と電流の大きさから論説をしています。

解図2に、(a)スター結線時の相電流、(b)にデルタ結線時の相電流と線電流を示しています。

(a)において、スター結線の時の相電圧は、線間電圧の$\frac{1}{\sqrt{3}}$倍となるので、相電流は、$I=\frac{\left(\frac{V}{\sqrt3}\right)}{Z}$となります。

(b)において、線間電圧$V$によってインピーダンス$Z$の負荷に電流を流すので、相電流は$I=\frac{V}{Z}$となります。デルタ結線において、線電流は相電流の$\sqrt{3}$倍となります

以上より、線電流を比較すれば、

$$\frac{スター結線の線電流 \left( 相電流 \right)}{デルタ結線の線電流}=\frac{\frac{\left(\frac{V}{\sqrt{3}}\right)}{Z}}{\sqrt{3}・\frac{V}{Z}}=\frac{1}{3}$$

となって、スター結線時はデルタ結線時に比べて始動電流を$\frac{1}{3}$倍に抑えることができます。


(a)スター結線時

(b)デルタ結線時

解図2

小問(3)始動電流を低下させたときの問題点

試験センター 標準解答

a. 始動トルクが約$\frac{1}{3}$に低下するため適用できる負荷が限られる。

b. 始動トルクが低下するので始動時間が長くなる。

c. スターからデルタに切り換える際に過大な突入電流が生じることがある。

d. 切換え時の電源位相によっては突入電流により,ブレーカの動作を招く。

e. 切換え時の無電圧時間は電動機が空転するためデルタ投入時に機械的ショックを
生じる。

始動電流を小さくしたときに生じる電動機運転への影響

aについては、始動電流を抑えるので始動トルクが小さくなることが説明されています。

小問(1)では始動電流が大きいことのデメリットとして「e. 始動時の機械的ショックが大きい。」と書かれていましたが、これと対をなす形になります。

bについては、始動トルクが小さくなるので負荷を回転させるのに時間がかかります。

回転系の運動方程式である、$T=I\frac{d\omega}{dt}$をイメージするといいでしょう。($T$:トルク、$I$:慣性モーメント、$\omega$角速度)

cとdについては、スター結線をデルタ結線に変更する際の位相差によって突入電流が流れます。この突入電流により、ブレーカの誤動作の可能性があります。

eは、結線を切り替える際に一時的に無電圧になり、その後デルタ結線で突然電源を投入するのでトルク変動があり、機械的ショックが生じます。

小問(4)インバータ始動方式の長所

試験センター 標準解答

次の方式 a~f のうちいずれを解答してもよい。

インバータを用いて,電動機の一次周波数を最低周波数から定格値まで順次上昇さ
せ,電動機の同期速度を連続的に変えて加速する方式であり,次のような優位な点が
ある。

a. 通常は$\frac{f}{V}$を基本とし,電圧特性に補正を施した制御を行うので低周波低電圧でも
磁束が低下せず始動トルクが低下しない。

b. 始動電流が定格電流の約2倍程度以下になる。

c. 始動時間をインバータによって制御できる。

d. 始動期間に生じる電動機の損失が少なく,発熱を抑制できる。

e. ソフトスタートにより始動による機械的ショックが小さい。

f. 始動電流や突入電流による他の機器への影響が少ない。

論説で狙いやすい解答例

a~fの中の2個が書けていればOKです。

狙いやすいのはc、d、e、fでしょうか。この4つは電流関係の論説からもイメージしやすい解答でしょう。

一方で、aやbは知っていないと思いつきにくいかもしれません。

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