令和3年度 電験2種 2次試験 機械・制御 問3の過去問解説(パワーエレクトロニクス 昇圧チョッパ回路の動作解析)

図はIGBTをスイッチングデバイス$S$(以下、デバイス$S$と略す)に用いたチョッパ回路である。このチョッパの機能は、キャパシタンス$C$のコンデンサとリアクタンスLのリアクトルの働きによって実現されている。入力は直流電圧$V_{in}$(一定値)、出力は$V_{out}$である。デバイス$S$は、$T_{on}$の時間はオン、$T_{off}$の時間はオフを繰り返し、周期は一定で、$T_{on}+T_{off}$である。入力電流$i_{in}>0$、全ての回路素子は理想的と仮定して、次の問に答えよ。

(1)このチョッパ回路は太陽光発電でよく用いられている。その理由についてチョッパ回路の$V_{in}$と$V_{out}$の大小関係に触れつつ簡単に述べよ。

(2)$T_{on}$の時間において、リアクトルの電圧$v_L$を求めよ。また、求めた式をもとに電流$i_{in}$は増加するか、減少するか述べよ。

(3)$T_{off}$の時間において、リアクトルの電圧$v_L$を求めよ。また、求めた式をもとに電流$i_{in}$は増加するか、減少するか述べよ。

次に、コンデンサのキャパシタンス$C$は十分に大きく、チョッパの出力電圧は一定値$V_{out}$に平滑されているものとする。さらに、電流$i_{in}$のリプルが十分に小さく一定値$I_{in}$と見なせると仮定する。このとき、

(4)ダイオード$D$に流れる電流$i_D$の平均値$I_D$を$T_{on}$、$T_{off}$、$I_{in}$を用いて示せ。

(5)出力電圧$V_{out}$を$T_{on}$、$T_{off}$、$V_{in}$を用いて示せ。

解答・解説

小問(1)

電圧の大小関係は、$V_{in}<V_{out}$である。

太陽光発電に用いられる理由は、電圧の高いバッテリーに充電する、太陽光発電よりも波高値の高い電力系統に接続するなどがある。

標準回答の理由はなんとなく微妙な表現で、薄味というか、もう少し論説のツッコミがあってもいいように感じます。(MPPT制御とかに話題が広がると思います。)

一般的に、太陽光発電は出力電圧と出力電力の関係について、以下のような山のような形のグラフになります。

通常、太陽光発電は赤い丸で示した最高出力で運転したいのですが、これには太陽光発電の出力電圧を調整する必要があります。この最大出力点に追従するように制御することを、MPPT制御といいます。

では、どうやって太陽光発電の出力電圧を制御するかですが、太陽光発電は、下の図のように昇圧チョッパ回路、DCリンク、インバータとつなぎ、直流を任意の電圧の直流に変換し、さらにインバータで交流に変換します。ここで、DCリンクコンデンサは十分大きく、昇圧チョッパ出力位置であるDCリンク直流電圧値は一定になります。

さて、この状況で昇圧チョッパ回路の昇圧比を変更すれば、どこの電圧が変化するでしょうか?

答えは、出力電圧が一定であるため、昇圧比に従って太陽光発電の出力電圧が変動します。

動作としては、

  • 昇圧比を上げれば太陽光発電の電圧は低下
  • 昇圧比を下げれば太陽光発電の電圧は上昇

します。

この原理を利用して、太陽光発電のMPPT制御を実現します。

以上を考えれば、昇圧チョッパが採用される理由として、「電圧一定の電力系統に連系する際、太陽光発電の出力電圧を制御し、最大出力運転(MPPT制御)を行うため。」といった感じで少し話を広げてもいいような気はします。

小問(2)

スイッチがオンのとき、解図1に示すように、電源→リアクトル→スイッチの間の短絡経路になるので、

$$v_L=V_{in}\tag{1}$$

となる。

この時、

$$v_L=L\frac{di_{in}}{dt}=V_{in}>0\tag{2}$$

より、電流の微分値は正であるため、電流は増加する。

解図1

(答)電流は増加する。

小問(3)

スイッチがオフのとき、解図2に示す通り、電源→リアクトル→ダイオード→コンデンサ、抵抗の電流経路となるので、

$$v_L=V_{in}-V_{out}\tag{3}$$

となる。

解図2

この時、$V_{in}<V_{out}$の関係があるので、

$$\begin{align}
v_L&=L\frac{di_{in}}{dt}\\
&=V_{in}-V_{out}<0\tag{4}
\end{align}$$

より、電流の微分値は負であるため、電流は減少する。

(答)電流は減少する。

小問(4)

解図1、解図2より、常に一定の電流$I_{in}$が供給されているならば、スイッチがオフのときのみダイオードに電流I_{in}が流れるので、導通時間の比率から、

$$I_D=\frac{T_{off}}{T_{on}+T_{off}}I_{in}\tag{5}$$

となる。

(答)$I_D=\frac{T_{off}}{T_{on}+T_{off}}I_{in}$

小問(5)

式(2)、式(4)で求めたリアクトルの両端電圧$v_L$と、リアクトル両端の電圧は1周期平均0であることを利用すれば、

$$V_{in}T_{on}+V_{in}-V_{out}T_{off}=0\tag{6}$$

$$V_{out}=\frac{T_{on}+T_{off}}{T_{off}}V_{in}\tag{7}$$

となる。

(答)$V_{out}=\frac{T_{on}+T_{off}}{T_{off}}V_{in}$

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