対称座標法がなぜ必要なのかイメージをわかりやすく説明!

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今回は、対称座標法についてイメージをつかみやすいように説明します。

対称座標法とは、不平衡電流を、零相・正相・逆相の対称分に分解し、それらの重ね合わせで不平衡回路を計算する手法です。

この記事では、

  • 対称座標法の概念
  • 零相・正相・逆相成分のイメージ

を説明します。

対称座標法について完全にイメージを理解できるように説明しましたので、順に読み進めてください。

この記事では、対称座標法が何のために必要なのかを説明しています。

具体的な計算方法は、

をご覧ください。

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概要:対称座標法とは何なのか?

対称座標法とは、不平衡な三相交流回路を、3つの対称分である、

  • 零相
  • 正相
  • 逆相

に分解する計算手法のことです。

一般的に、平衡な三相交流回路では、基準となるa相だけを取り出し計算すれば、位相を120°ずらせばb相、c相は自動的に求まります。

しかし、不平衡な三相交流回路では、そう簡単にはいきません。

そこで、対称座標法を使い、不平衡三相交流回路を規則性のある対称分に分解し、対称分を計算することでa相、b相、c相を一気に計算する手法を用います。

不平衡回路を規則性のある対称分に分解するイメージを持ちながら、読み進めてください。

なぜ対称座標法が必要なのか?

そもそもなのですが、三相交流が1相のみを取り出してベクトル図で考えられるのは、平衡な三相交流だからです。

平衡三相交流の場合

a相、b相、c相にはそれぞれ120°の位相差がありますが、a相だけで考えても、

  • a相を120°遅らせればb相
  • a相を120°進めればc相

となることが既知のため、b相、c相のベクトル図を省略することができていました。

そのため、図1に示す通り、平衡な三相交流回路があった場合、図2に示すようにa相だけを取り出して計算すれば、a相の計算結果の位相を120°ずつずらせば、a相、b相、c相の計算結果も同時に求めることができます。

この操作を複素数で表現すれば、$\frac{2}{3}\pi\left[{\rm rad}\right]$ずつ位相を回転させるので、

$\dot{I_b}=\dot{I_a}e^{-j\frac{2}{3}\pi}$

$\dot{I_c}=\dot{I_a}e^{j\frac{2}{3}\pi}$

となります。

図1 平衡三相交流回路の回路図とベクトル図

図2 平衡三相交流回路を単相交流回路で置き換えた回路図とベクトル図

不平衡三相交流の場合

しかし、不平衡三相交流となれば、a相、b相、c相で、

  • 位相の相対関係が崩れること
  • 振幅も異なること

から、単にa相だけを取り出して計算していては、正確な計算ができません。

図3 不平衡三相交流回路の計算

そこで、対称座標法の登場です。

対称座標法は、

  • 零相
  • 正相
  • 逆相

といった対称分に分解することで、対称分を計算します。

そして、対称分を公式に沿って合成することで、不平衡なa相、b相、c相の値を同時に求めることができます。

対称座標法は不平衡を平衡した対称分に分解する

まずは、そもそも対称座標法とは何なのかを説明していきます。

例えば図4に示すような不平衡な三相交流回路について、その回路に流れている電流を、図5のように零相、正相、逆相という3つの成分に分解することを考えます。

ここで重要なのは、”すべての不平衡三相電流”は、図5で示されるような、零相・正相・逆相という”3つの対称成分”に分解できることを前提に考えていくことです。

図4 不平衡な三相交流回路


(a)零相回路(a,b,cは同相)

(b)正相回路(相順:a,b,c)

(c)逆相回路(相順:c,b,a)

図5 零相・正相・逆相

では、零相・正相・逆相とは具体的に何なのかを見ていきます。

対称分とは

零相電流って何?

零相電流とは、a相、b相、c相に同じ大きさで同相で流れる電流になります。ベクトル図は図6、実際の波形例は図7の通りになります。なお、a相、b相、c相の零相電流はそれぞれ同位相で同じ大きさのため、図7に示す波形は完全に重なっています。

図6 零相電流のベクトル図

図7 零相電流の波形

正相電流って何?

正相電流は相順が順方向なa相、b相、c相となっている電流(波形のピークの順がa, b, cの順)であり、ベクトル図は図8に、波形は図9になります。

図8 正相電流のベクトル図

図9 正相電流の波形

逆相電流って何?

逆相電流は相順が逆方向なc相、b相、a相となっている電流(波形のピークの順がc, b, aの順)であり、ベクトル図は図10に、波形は図11になります。

図10 逆相電流のベクトル図

図11 逆相電流の波形

不平衡三相電流の対称座標からの合成するイメージ

波形合成のイメージ

では、ここまで見てきた、零相電流、正相電流、逆相電流を合成してみます。
ここでは計算例として、

  • 零相電流振幅:0.5
  • 正相電流振幅:1.0
  • 逆相電流振幅:0.3

で計算してみました。

a相については、図12に示すように、

  • a相 零相電流
  • a相 正相電流
  • a相 逆相電流

の和で計算できます。

図12 a相電流の合成

b相については、図13に示すように、

  • b相 零相電流(a相 零相電流と同じ)
  • b相 正相電流(a相 正相電流の120°遅れ)
  • b相 逆相電流(a相 逆相電流の120°進み)

の和で計算できます。

図13 b相電流の合成

c相電流については、図14に示すように、

  • c相 零相電流(a相 零相電流と同じ)
  • c相 正相電流(a相 正相電流の120°進み)
  • c相 逆相電流(a相 逆相電流の120°遅れ)

の和で計算できます。

図14 c相電流の合成

以上について、a, b, c相の電流をまとめて表現すると、図15のような不平衡な三相電流になります。

図15 不平衡三相交流電流

今回、対称座標法の計算イメージを理解するために、対称分の振幅が既知である前提から合成して三相不平衡電流を表現しました。

本来は、対称座標法は不平衡な三相電流を対称分に分解し、計算を行う手法なので、

  • 不平衡三相交流を対称分に変換
  • 各種計算を行う
  • 対称分を再び不平衡三相交流に戻す

といった計算過程になります。

ベクトル図合成のイメージ

図6から図15では、波形によって対称分電流を合成する流れを見てきましたが、今度は同じ条件でベクトル図から見ていきます。

図16のような対称成分を一つのベクトル図に描き、合成します。


(a)零相電流

(b)正相電流

(c)逆相電流

図16 対称分電流のベクトル図

すると、図17のようなベクトル図になりました。

観測点は、零相電流、正相電流、逆相電流を同時に観測することで、赤で示している不平衡三相交流電流を観測することになります。

図17 不平衡三相交流電流のベクトル図

波形とベクトル図を1ページにまとめました。

ベクトル図の$\dot{I_a}$、$\dot{I_b}$、$\dot{I_c}$が反時計回りに回転し、その虚軸投影を見れば波形データが得られます。

まとめ

ここまで、対称座標法について、「なぜ対称座標法が必要なのか」ということを、平衡三相交流回路と不平衡三相交流回路の状況の違いに対して説明してきました。

イメージをつかみやすいように図を多用したので、順に理解していってみてください。

この記事の内容を理解できたら、次は対称座標法の変換公式の解説記事がおすすめです。

対称分への変換、また逆変換に関する以下の公式について、どんな複素数ベクトル演算を行っているのかを図示しました。

$$\left(\begin{matrix}\dot{I_0} \\ \dot{I_1} \\ \dot{I_2}\end{matrix}\right)
=\frac{1}{3}\left(
\begin{matrix}
1&1&1\\
1&a&a^2\\
1&a^2&a
\end{matrix}\right)
\left(\begin{matrix}
\dot{I_a} \\ \dot{I_b}\\ \dot{I_c}
\end{matrix}\right)$$

$$\left(\begin{matrix}
\dot{I_a} \\ \dot{I_b} \\ \dot{I_c}\end{matrix}\right)
=\left(\begin{matrix}
1 & 1 & 1 \\
1 & a^2 & a \\
1 & a & a^2
\end{matrix}\right)
\left(\begin{matrix}
\dot{I_0} \\ \dot{I_1} \\ \dot{I_2}
\end{matrix}\right)$$

対称座標法だけではなく、交流回路におけるベクトル図の理解もできると思うので、ぜひ参考にしてください。

対称座標法の変換公式と複素数ベクトル演算の理解について

対称座標法を使った具体的な故障電流の計算方法も説明しています。

以上、対称座標法がなぜ必要かという疑問解決の参考になれば幸いです。

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