令和2年度 電験2種 2次試験 電力・管理 問6の過去問解説(送配電・変電・管理:受変電設備のコンデンサによる力率改善の計算)

図1は、受変電設備の一部を表した単線結線図である。容量$P_T=12 000{\rm kV・A}$の変圧器から、容量$P_1=6 000{\rm kW}$で、力率$cos\theta_1=0.8$(遅れ)の負荷に電力を供給しており、変圧器の2次側には、力率改善用コンデンサ$Q_1=2 000{\rm kvar}$が投入されている。この設備において、次の問に答えよ。なお、力率改善用コンデンサの直列リアクトルは考慮しなくてよい。

図1

(1)上記の運用状況をベクトル図に表すと、図2のようになる。この運用に、さらに容量$P_2=4 500{\rm kW}$で、力率$cos\theta_2=0.6$(遅れ)の負荷を増設すると、変圧器は過負荷になるおそれがある。そこで、変圧器を過負荷にしないためには、増設分の力率改善用コンデンサの容量$Q_2\left[{\rm kvar}\right]$は、少なくともいくら必要か。また、このときの総合力率$cos\theta_S$はいくらになるか。

(2)答案用紙に印刷されている図2に、$P_2\left[{\rm kW}\right]$、$Q_2\left[{\rm kvar}\right]$のベクトル図と、力率角$\theta_2$を追記せよ。

(3)総合力率$cos\theta_S=0.95$(遅れ)にするためには、増設する力率改善用コンデンサの容量$Q_2\left[{\rm kvar}\right]$はいくら必要か。

図2

解答・解説

小問(1)

容量$P_2$の負荷を増設する前は、皮相電力$S_1$について、

$$S_1=\sqrt{P_1^2+\left(\frac{P_1}{cos\theta_1}sin\theta 1-Q_1\right)^2}\tag{1}$$

である。

ここに容量$P_2$の負荷を接続するので、

$$S_2=\sqrt{\left(P_1+P_2\right)^2+\left(\frac{P_1}{cos\theta_1}sin\theta_1+\frac{P_2}{cos\theta_2}sin\theta_2-Q_1\right)^2}\tag{2}$$

さらに、力率改善コンデンサ$Q_2$も接続するので、

$$S_3=\sqrt{\left(P_1+P_2\right)^2+\left(\frac{P_1}{cos\theta_1}sin\theta_1+\frac{P_2}{cos\theta_2}sin\theta_2-Q_1-Q_2\right)^2}\tag{3}$$

となる。

これが、変圧器容量$P_T=12 000{\rm kV・A}$と一致すればいいので、

$$12000=\sqrt{\left(6000+4500\right)^2+\left(\frac{6000}{0.8}×0.6+\frac{4500}{0.6}×0.8-2000-Q_2\right)^2}\tag{4}$$

$$Q_2=2690.52498069\left[{\rm kVar}\right]\tag{5}$$

この時の力率は、

$$\begin{align}
cos\theta_S&=\frac{P_1+P_2}{S_3}\\
&=\frac{6000+4500}{12000}\\
&=0.875\tag{6}
\end{align}$$

となる。

(答)$Q_2=2.69×10^3\left[{\rm kVar}\right], $cos\theta_S=0.875$

有効桁について、標準回答では、$Q_2=2.7×10^3\left[{\rm kVar}\right]$となっていますが、電験2種 2次試験では特に指定がない限り有効桁は3桁です。

標準回答では、稀に有効桁の取り扱いが微妙な部分がありますが、普段から回答練習をするときには、必ず有効桁3桁を守ってください。

※この問題について厳密に考えれば、標準回答に記載のある解答例は、題意に沿っておらず、減点対象です。

小問(2)

新たに接続した負荷について、

  • 横軸:$4 500\left[{\rm kW}\right]$
  • 縦軸:$\frac{4500}{0.6}×0.8=6 000\left[{\rm kW}\right]$

のベクトルを描く。

解図1の通り、$Q_2$は、全負荷分のベクトルの先端から設備容量を示す円に接するまでの大きさになる。

解図1

(答)解図1に示す通り。

小問(3)

有効電力

$$\begin{align}
P&=P_1+P_2\\
&=6000+4500\\
&=10500\left[{\rm kW}\right]\tag{7}
\end{align}$$

無効電力

$$\begin{align}
Q&=\frac{P_1}{cos\theta_1}+\frac{P_2}{cos\theta_2}+Q_1+Q_2\\
&=\frac{6000}{0.8}×0.6+\frac{4500}{0.6}×0.8-2000+Q_2\\
&=8500-Q_2\left[{\rm kVar}\right]\tag{8}
\end{align}$$

力率$cos\theta$は、

$$cos\theta=\frac{P}{\sqrt{P^2+Q^2}}\tag{9}$$

であるので、

$$0.95=\frac{10500}{10500^2+\left(8500-Q_2\right)^2}\tag{10}$$

これを解いて、

$$Q_2=
\begin{cases}
111951.183104\left[{\rm kVar}\right]\\
5048.81689591\left[{\rm kVar}\right]
\end{cases}\tag{11}$$

となり、$Q_2=5048.81689591\left[{\rm kVar}\right]$が適する。

(答)$Q_2=5.05×10^3\left[{\rm kVar}\right]$

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