【R3 電験2種 二次 電力・管理 問1の過去問解説】火力発電所の媒じん/硫黄酸化物/窒素酸化物の対策設備の論説問題

この記事では、令和3年度 電験2種 二次試験 電力・管理 問1の過去問解説をしています。

問題の内容は、火力発電所から排出される様々な環境汚染物質(媒じん、硫黄酸化物、窒素酸化物)について、対策設備とその原理に関する論説です。

火力発電所の全体構造が頭に入っていれば、比較的解答しやすい論説問題かなと思います。

令和3年度 電験2種 二次試験 電力・管理 問1

大気汚染防止法にて規制される以下の大気汚染物質について、その発生原因と、我が国の火力発電所での対策装置(設備)、及びその原理について(1)~(3)それぞれ100字程度で述べよ。

(1)媒じん

(2)硫黄酸化物(${\rm SOx}$)

(3)窒素酸化物(${\rm NOx}$)

解答・解説

火力発電所の空気の流れは、解図1の通りになります。

本問は、
(1)媒じん:電気集じん機
(2)硫黄酸化物(SOx):脱硫装置
(3)窒素酸化物(NOx):脱硝装置、その他
に関する論説問題です。

解図1

小問(1):媒じんの対策装置と原理

試験センター 解答

発生原因:燃料に含まれる灰分が燃焼することで生成される

対策装置(設備):電気集じん機(媒じん除去装置)を使用する

原理:(電気集じん機)媒じんを帯電させて静電気力により排ガスより分離捕集を行う

出展:令和3年度 第2種電気主任技術者二次試験 標準解答

電気集じん機

電気集じん機によって排気ガス中に含まれる媒じんを帯電させ、電極に吸着することで除去します。

電気集じん機は、解図2に示すような正極と負極があり、この間に直流高電圧を印加し、コロナ放電を発生させます。コロナ放電を排気ガスが通過すると、排気ガス中の媒じんは負に帯電し、正極へと引き寄せられ、取り除かれます。

解図2 電気集じん機の構造

小問(2):硫黄酸化物(SOx)の対策装置と原理

試験センター 解答

発生原因:燃料中に含まれる硫黄分が燃焼することで生成される

対策装置(設備):脱硫装置を使用する

原理:(脱硫装置)石灰石―石膏法にて排ガス中の亜硫酸ガスを石灰(石灰スラリー)に吸収させ亜硫酸カルシウムとして除去する。これを空気で酸化することで石膏が生成される

出展:令和3年度 第2種電気主任技術者二次試験 標準解答

硫黄酸化物(SOx)の発生と湿式法(石灰石スラリーの投入)

硫黄分が燃焼すると、酸素と結合して${\rm SOx}$が生成されます。

これを除去するのに、排気ガス中に石灰石などのアルカリ剤のスラリーを噴霧することで除去し、副生品として石膏が生成されます。

別名、湿式法とも呼ばれ、この処理は解図1で示す吸収塔で行われます。

ガス-ガスヒータによる再加熱

吸収塔から出る排気ガスは水分が多く、温度が下がっているので、煙道を腐食させたり、排気ガスの拡散性が悪かったりするので、ガス-ガスヒータで再加熱して煙道から排気されます。

小問(3):窒素酸化物(NOx)の対策設備と原理

試験センター 解答

以下の発生原因の中から一つ,対策装置(設備)の中から一つ及びその原理が記載されていればよい。
発生原因:
燃焼空気中の窒素が高温条件下で酸素と反応して生成される
燃料中に含まれる窒素分が燃焼により酸化され生成される

対策装置(設備):
低NOx バーナー,排ガス混合法,ボイラ二段燃焼,脱硝装置を使用する

原理:
(低NOxバーナー)燃焼方法(燃焼温度低下)の改善により生成量を減らす
(排ガス混合法)ガス混合機により排ガスを燃焼空気に混合して低酸素燃焼を行う
(ボイラ二段燃焼)バーナー周りの空気比を下げ NOx の生成を抑制させ未燃分を後流から注入した空気で再燃焼させる
(脱硝装置)アンモニア接触還元法にて還元剤としてアンモニアを加え混合したのち触媒層に通すことで NOx とアンモニアが還元反応して窒素と水蒸気に分解される

出展:令和3年度 第2種電気主任技術者二次試験 標準解答

窒素酸化物(NOx)の発生原理

空気中の窒素が高温の環境下で酸素と結合すると窒素酸化物(${\rm NOx}$)が生成されます。また、燃料中の窒素が酸素と反応しても同様に生成されます。

これを防ぐには、
①燃焼温度を下げる
②空気の比率を下げる
といった、燃焼過程を工夫する方法や、
③アンモニア触媒還元法(乾式法)
といった事後的な対策の合計3パターンが考えられます。

窒素酸化物(NOx)の対策

①燃焼温度を下げる
窒素酸化物の発生ポイントとして高温の環境というのがあり、逆に言えば燃焼温度を下げてしまえば、${\rm NOx}$の発生は抑えられます。

②空気の比率を下げる
空気中の窒素が酸素と反応するのであれば、そもそも空気の少ないところで燃焼させれば、窒素酸化物の発生は抑えれます。この時、空気が少ないので燃料は不完全燃焼しますが、燃焼ガスに再び空気を加え再度燃焼させることで完全燃焼させます。こうして、ボイラで2段階で燃焼させます。

③アンモニア触媒還元法(乾式法)
生成された窒素酸化物に対して、排気ガス中にアンモニアを注入し触媒上で分解させます。

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