令和2年度 電験2種 2次試験 電力・管理 問5の過去問解説(故障電流:特別高圧架空送電線路の電磁誘導障害の論説問題)

特別高圧架空電線路による電磁誘導障害について、次の問に答えよ。

(1)電磁誘導作用により通信線に誘起される電圧の種類を二つ挙げ、それぞれの発生原理について簡潔に説明せよ。

(2)電磁誘導障害の防止対策のうち、架空電線路側の対策について、二つ答えよ。

解答・解説

小問(1):電磁誘導作用により通信線に誘起される電圧の種類

試験センター 解答

以下から二つ記載されていればよい。

(電圧の種類)
①異常時誘導電圧
②常時誘導電圧
③誘導雑音電圧

(発生原理)
①異常時誘導電圧:送電線に一線地絡事故が発生した場合に地絡電流が大地帰路電流となって流れることにより,隣接する通信線路と大地間に誘起される電圧
②常時誘導電圧:送電線の常時運転時に,各相の負荷電流の不平衡や各相導体と通信線の離隔の不整合によって誘起される電圧
③誘導雑音電圧:送電線に流れる常時の高調波電流に起因して生じる電圧

出展:令和2年度 第2種電気主任技術者二次試験 標準解答

電磁誘導障害の発生原理

問われているのが電磁誘導障害であり、静電誘導障害(電力線・通信線間の静電容量の不平衡に起因)は含まないので注意が必要です。

電磁誘導障害は、解図1に示すように主に、

  • 不平衡電流が流れたとき
  • 電力線各相と通信線の相互インダクタンスの不整合

の両方あるいは、いずれかであるとき、電磁誘導によって通信線に電圧が誘起される現象です。

解図1において、通信線に誘導される電圧$\dot{E_m}$は、

$\dot{E_m}=M_a\dot{I_a}+M_b\dot{I_b}+M_c\dot{I_c}$

であり、相互インダクタンスがすべて$M$で等しければ、

$\dot{E_m}=M\left(\dot{I_a}+\dot{I_b}+\dot{I_c}\right)$

となり、三相電流が完全に平衡していれば総和は$0$になるので、

$$\dot{E_m}=0$$

となります。

解図1

電磁誘導障害の発生要因

標準回答にあるように、地絡電流による電流の不平衡分(零相電流)が流れる場合や、正常時にも流れる電流の不平衡分によって誘導障害が発生します。

また、離隔の不整合によって相互インダクタンスに不整合がある場合も誘導障害が発生します。

サイリスタなどのスイッチング機能を持つ負荷が接続されていれば、電力系統には高調波電流が流れています。この高調波電流も誘導障害を起こし、同じ周波数の電圧が通信線に誘導されます。

小問(2):電磁誘導障害の防止策(架空地線の対策)

試験センター 解答

以下の主な対策から二つ記載されていればよい。
①架空地線の条数を増やす。
②架空地線に導電率のよい鋼心イ号アルミより線やアルミ被鋼より線を使用する。
③送電線をねん架する。
④送電系統の保護継電方式に高速遮断方式を採用する。
⑤遮へい線を設置する。
⑥送電線のルートを変更し,お互いの離隔距離を大きくする。
⑦中性点抵抗接地方式の抵抗値を大きくする。
⑧中性点接地方式に消弧リアクトル接地方式を採用する。

出展:令和2年度 第2種電気主任技術者二次試験 標準解答

電磁誘導障害を対策する方法

電磁誘導障害の対策には、

  • 架空地線の遮へい角を小さくする
  • 送電線をねん架する
  • 距離を開ける(離隔の確保)
  • 地絡電流の抑制

があります。

架空地線の遮へい角を狭くする

架空地線の条数を増やしたり導電率を上げれば遮へい角が狭くなり、より電磁誘導障害を抑えることができます。

ねん架

解図2に示すように相を入れ替えながら敷設することで、電流の不平衡や離隔の不整合を抑制でき、電磁誘導障害を抑えられます。

解図2

距離を開ける(離隔の確保)

相互インダクタンスは、電力線と通信線の距離が近いほど大きくなり、その分電磁誘導障害も大きくなります。

そこで、単純に電力線と通信線の意距離を開ければ、電磁誘導障害を抑えられます。時には送電線や通信線のルートを変更することも考えられます。

地絡電流の抑制

大きな不平衡電流が流れる地絡故障では、地絡電流を抑制すれば電磁誘導障害を抑えられます。

一方で、地絡電流を抑制すれば、地絡時の異常検出が難しくなることから、地絡リレーの感度を高くしなければならい場合もあります。

そのほか地絡故障の自然消滅を狙う消弧リアクトル接地方式も考えられますが、デメリットとしてこの方式は電力系統に異常電圧を生じやすいことも知っておいてください。

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