保護リレーシステムは、電力系統の状態を把握する計器用変成器、そこから得られる情報をもとに事故を検出して事故除去指令を出す保護リレー、指令を受けて事故点を切り離す遮断器の、三つにより構成される。これらに関して、次の(1)~(3)のそれぞれに対し、100字程度で簡潔に述べよ。
(1)計器用変成器の役割について説明し、計器用変成器のうち最も代表的なものを二つ挙げよ。また、計器用変成器の比誤差$\epsilon\left[\%\right]$を、公称変成比$K_n$、真の変成比$K$を用いた式で表せ。
(2)保護リレーが電力系統を的確に保護するために具備すべき条件のうち、信頼性について説明せよ。
(3)一般に$77$又は$66{\rm kV}$系統に使用される遮断器の定格遮断時間を、サイクル数で答えよ。また、遮断器において保護リレーからの事故除去指令を受ける箇所の名称を答え、あわせて同箇所が持つ引外し自由(トリップフリー)の機能と目的について説明せよ。
目次
解答・解説
小問(1):計器用変成器の役割と比誤差
試験センター 解答
・役割:計器用変成器は,保護リレーや計器を高圧回路から絶縁し,電流や電圧を適当な大きさに小さく変成して継電器や計器に与えること。
・最も代表的な変成器:CT(変流器),VT(計器用変圧器)。
・比誤差$\epsilon$は次式で表される。
$$\epsilon=\frac{K_n-K}{K}×100\left[\%\right]$$
計器用変成器と比誤差
解図1に示すように、電圧を使いやすい値($110{\rm V}$)に変換するのが計器用変圧器、電流を使いやすい値に変換するのが計器用変流器です。計器用変圧器と計器用変流器を合わせて、計器用変成器といいます。
計器用変圧器の2次側を短絡してはいけません。一方、計器用変流器の2次側は開放してはいけません。
一般的に誤差$\epsilon$の計算は、
$$\epsilon=\frac{{\rm 測定値}-{\rm 真の値}}{{\rm 真の値}}×100\left[\%\right]$$
で示されます。
![]() (a)計器用変圧器 |
![]() (b)計器用変流器 |
解図1 計器用変成器
小問(2):保護リレーが具備すべき信頼性
試験センター 解答
・保護区間内部の事故に対してのみ正動作し,誤不動作をしないこと。
・保護区間外部の事故に対しては正不動作し,誤動作をしないこと。
・点検や自動監視を行うこと。
・故障率が低いこと。
・冗長化されていること。
保護リレーの信頼性と向上させる方法
保護リレーが、自身の保護区間のみで動作することは、広範囲に停電を起こさないために重要なポイントです。
電力系統で事故が発生すれば、事故区間のみ送電を停止し、正常な他の場所ではできる限り送電を継続しなければなりません。
そのため、保護リレーは自身の保護区間内に発生した事故にのみ反応し、遮断器に信号を送り遮断器を動作させます。正常時、あるいは保護区間の外での事故であれば、動作しません。
そのほか点検や自動監視が行われていることや、故障率が低く冗長化されていることもポイントです。
特に冗長化については、例として信頼性が80%の保護リレーが2個冗長になっている場合、両方同時に故障する確率は0.2×0.2×100=0.4%であり、システム全体での信頼性を99.6%にまで高めることができます。
小問(3):遮断器の定格遮断時間とトリップフリー機能
試験センター 解答
・5サイクル及び3サイクル。
・引外しコイル。(トリップコイル,TCも可)
・引外しコイルと投入コイルが同時に付勢されたとしても,投入動作と無関係に自由に引外される機能のこと。投入操作と事故が同時に発生した場合に開放を優先し,投入・開放を繰り返さないことにより遮断器の損傷・大事故を防ぐ目的で用いられる。
トリップフリー機能とは
定格サイクル数は5~3サイクルであり、0.05秒から0.1秒程度になります。
トリップフリーとは、遮断器をロックカバーやハンドルロックでオン状態で固定したとしても、過電流が流れると遮断器が動作する機能のことを言います。
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