地中送電線の絶縁劣化診断法と事故点測定法について、次の問に答えよ。
(1)表1は、CVケーブルの絶縁劣化である水トリーに関する絶縁劣化診断法についての記述である。表中の(A)~(D)に当てはまる適切な語句についてそれぞれ答えよ。
(2)表2は、地中送電線の事故点測定法である「マーレーループ法」と「パルスレーダー法(送信形パルス法)」の原理並びにそれぞれの長所及び短所についての記述である。表中の(E)~(I)に当てはまる適切な語句についてそれぞれ答えよ。
表1
劣化診断法 | 原理 |
損失電流法 | 水トリー劣化ケーブルの充電電流の中に、課電電圧と同位相の損失電流成分が含まれることから、この損失分を測定し劣化の状況を把握する手法である。劣化したケーブルの測定波形には$\fbox{$\ \ \ \left({\rm A}\right)\ \ \ $}$歪が観測される。 |
$\fbox{$\ \ \ \left({\rm B}\right)\ \ \ $}$電荷法 | 最初に$\fbox{$\ \ \ \left({\rm C}\right)\ \ \ $}$課電によって水トリー部に電荷を蓄積させ、次に$\fbox{$\ \ \ \left({\rm D}\right)\ \ \ $}$課電で蓄積した電荷を放出させる、$\fbox{$\ \ \ \left({\rm C}\right)\ \ \ $}$課電と$\fbox{$\ \ \ \left({\rm D}\right)\ \ \ $}$課電を組み合わせた手法である。検出された電荷の量は、水トリーの数や長さによって変化するため水トリーの発生状況を検知することができる。 |
表2
事故点測定法 | 原理 | 長所 | 短所 |
マーレーループ法 | $\fbox{$\ \ \ \left({\rm E}\right)\ \ \ $}$の原理により、事故点までの抵抗値を高精度に測定する方法である。 | ・導体抵抗を利用した$\fbox{$\ \ \ \left({\rm E}\right)\ \ \ $}$法のため、測定精度が高く、誤差は1%程度以下である。 ・ケーブル事故の多くが$\fbox{$\ \ \ \left({\rm F}\right)\ \ \ $}$地絡であるため、適用範囲、使用実績が最も多い。 |
・$\fbox{$\ \ \ \left({\rm G}\right)\ \ \ $}$事故に適用できない。 ・$\fbox{$\ \ \ \left({\rm H}\right)\ \ \ $}$同時地絡事故のように並行健全相がない場合、測定は困難である。 |
パルスレーダー法(送信形パルス法) | 事故ケーブルにパルス電圧を加え、健全相と異なるサージインピーダンスをもつ事故点からの$\fbox{$\ \ \ \left({\rm I}\right)\ \ \ $}$パルスの伝搬時間を測定し、事故点までの距離を求める方法である。 | ・並行健全相が不要であるので、$\fbox{$\ \ \ \left({\rm H}\right)\ \ \ $}$同時地絡事故の測定に適している。 ・線路こう長がはっきりしていない場合でも測定できる。 |
・測定操作、パルス波形の判読に熟練を必要とする。 ・測定精度が若干低い。(誤差は一般的に2~5%) |
目次
解答・解説
小問(1):CVケーブルの水トリー絶縁劣化診断法
試験センター 標準解答
(A):高調波
(B):残留
(C):直流
(D):交流
代表的な水トリー測定法
代表的なCVケーブルの水トリー測定法は、
①損失電流法
②直流漏れ電流測定
③残留電荷法
があります。
損失電流法
解図1に示すように、正弦波電圧を印加すれば、90°の進み電流と、印加電圧の同相の電流が流れます。流れる電流の中から90°進み電流のみを除去し、印加電圧と同相となる電流を抜き出します。
解図1
抜き出した同相成分について電流波形を見たとき、水トリーが進展していれば、解図2に示すように3次高調波分が多く含まれるため、ここから劣化診断を行います。
解図2
おそらく試験では出題されませんが、第3高調波からどうやって水トリーの進行具合を判定するかですが、研究成果として水トリーが進行するほどI_3が大きくなり、$\theta_3$が変化していく様子が確認できているそうです。
興味があれば、
あたりを参考にしてみてください。
2個目の資料は後述の残留電荷法の説明もあり、わかりやすいです。
直流漏れ電流測定法
ケーブル絶縁体(導体-シース間)に直流高電圧を印加し、漏れ電流を測定します。
本来絶縁体は絶縁されていてコンデンサとして機能するので、静電容量いっぱいに充電されればそれ以上の電流は流れません。
しかし、水トリーがあれば漏れ電流が流れ続け、解図3に示すような電流波形になります。
ポイントとして、
①電流が大きい
②電流キック現象がある
③電流は時間とともに増加する
といったところが判定のポイントです。
解図3
残留電荷法
残留電荷法は、(a)直流電圧を印加してケーブルを充電し、(b)電源を切り離した後ケーブルを接地し、水トリーのみに電荷が残った状態にします。その後、(c)交流電圧を印加することで、水トリーに残留していた電荷を回収し、劣化診断を行います。
![]() (a)直流電圧の印加 |
![]() (b)ケーブルの接地 |
![]() (c)交流電圧の印加 |
解図4
小問(2):地中送電線の事故点測定法
試験センター 標準解答
(E):ホイートストンブリッジ
(F):1線
(G):断線
(H):三相
(I):反射
マーレーループ法:地絡故障点の測定法
マーレーループ法は、地絡故障時に地絡故障点の位置を誤差1%程度の精度で測定する手法です。
可変抵抗を用いてホイートストンブリッジと同じ原理で地絡故障点を算出します。
解図5に示すように、1線地絡が生じたとき、健全なケーブルと地絡しているケーブルを短絡線で結び、可変抵抗を通して直流電源を接続した場合を考えます。
この時、解図5のa~dは解図6のa~dに対応することになり、まさにホイートストンブリッジになります。
解図5
解図6
ここである可変抵抗の目盛が$\alpha\left[{\rm Ω}\right]$のときに平衡した(検流計の値が$0\left[{\rm A}\right]$)になったとき、対角成分の抵抗の積が等しくなるので、
$$\left(1000-\alpha\right)R×L_FR_C=\alpha R×\left(L+L-L_F\right)R_C$$
$$L_F=\frac{2\alpha L}{1000}\left[{\rm m}\right]$$
となって、地絡故障点を算出できます。
マーレーループ法では、断線故障には対応できません。
また、健全相との間でループを形成することが前提にあるので、三相全てが地絡し、健全相が存在しない場合も、同様に適用することができません。
パルスレーダー法:断線故障点の測定法
主に断線故障に適用されます。
ケーブルに対してパルスの伝搬速度が既知であるため、パルス信号を与え、断線個所で反射し戻ってくるまでの時間を測定することで、断線個所を測定します。
測定精度は2%~5%程度で、パルスの観測には熟練した経験が必要です。
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