令和2年度 電験2種 2次試験 電力・管理 問1の過去問解説(発電:水車発電機の定格回転速度の選定)

水車発電機の定格回転速度の選定の考え方に関して、次の問に答えよ。

周波数$60{\rm Hz}$の系統の地点において、有効落差$162{\rm m}$、出力$40{\rm MW}$のフランシス水車1台を設置する場合、最も適切な水車の定格回転速度$\left[{\rm min^{-1}}\right]$及び発電機の極数を求めたい。

(1)フランシス水車において、適用できる比速度と有効落差の関係が、次式によって表されるとき、次式に基づき算出される回転速度の上限値を求めよ。

$$n_s\leqq\frac{23\ 000}{H+30}+40$$

ただし、$n_s$:比速度(${\rm m・kW}$基準)、$H$:有効落差$\left[{\rm m}\right]$とする。

なお、比速度$n_s$は、出力$P\left[{\rm kW}\right]$、回転速度$N\left[{\rm min^{-1}}\right]$としたとき、

$$n_s=\frac{N×P^\frac{1}{2}}{H^\frac{5}{4}}$$

で与えられる。

(2)選定すべき定格回転速度を求めよ。また、その理由を100文字程度で述べよ。

(3)小問(2)の場合の発電機の極数を導出せよ。

解答・解説

小問(1):フランシス水車の回転数の上限

与えられている式より、$H=162$であるから、

$$\begin{align}
n_s&≦\frac{23000}{H+30}+40\\
&=159.791666666\tag{1}
\end{align}$$

また、$P=40\left[{\rm MW}\right]$であるから、

$$\begin{align}
n_s=&\frac{N×P^{\frac{1}{2}}}{H^{\frac{5}{4}}}\\
&=\frac{N×\left(40×10^3\right)^{\frac{1}{2}}}{162^{\frac{5}{4}}}\\
&=0.34604790751N\tag{2}
\end{align}$$

以上より、

$$\begin{align}
n_s&=0.34604790751N\\
&≦159.792666666\tag{3}
\end{align}$$

$$N≦461.764579984\tag{4}$$

となる。

(答)$461\left[{\rm min^{-1}}\right]$(四捨五入して$462\left[{\rm min^{-1}}\right]$は回転速度の上限を超過するためNG)

小問(2):選定すべき定格回転速度

同期発電機の回転数$N$は、極数$p$、系統周波数を$f\left[{\rm Hz}\right]$とすると、

$$\begin{align}
N&=\frac{120}{p}f\\
&=\frac{120}{p}×60\\
&=\frac{7200}{p}\tag{5}
\end{align}$$

となる。

小問(1)から、上限の回転数を得るための極数$p$は、

$$\begin{align}
N&=461.764579984\\
&=\frac{7200}{p}\tag{6}
\end{align}$$

$$p=15.592360939\tag{7}$$

となる。

ここで、同期発電機の構造上、極数は偶数であり、極数が多ければ式(5)に従って回転速度が遅くなる。そのため、小数点を切り上げて、

$$p=16\tag{8}$$

が適することになる。

極数について、p=16で同期速度を求めると、

$$\frac{120}{16}×60=450\left[{\rm min^{-1}}\right]\tag{9}$$

よって、定格回転速度は$450\left[{\rm min^{-1}}\right]$となる。

なお、選定理由は、

「水車および発電機の回転速度を上昇させると、同じ出力を得る場合は小型になり、スペース面でメリットとなる。一方で、回転数を上昇させすぎるとキャビテーションが発生し、振動が大きくなり発電効率が低下するほか、水車に懐食を生じてしまう。そのため、水車の回転速度は比速度の上限に対応する回転数で設計するのが望ましいため。」

(答)$450\left[{\rm min^{-1}}\right]$

試験センターの標準回答では、

「フランシス水車の比速度としては,①180程度で最も高い効率が得られること、また、②水車及び発電機は高速化することでの小型化によるコスト低減が図れることから、できるだけ適用限界の回転速度に近い定格回転速度を選定することが望ましい。」

出展:令和2年度 第2種電気主任技術者二次試験 標準解答

 

となっています。

普通に試験対策をしていて、フランシス水車が比速度180程度で高い効率が得られるというのは、すぐに思いつかないと思います。

※そもそも知らないと思います。

高速化による小型化は、1次試験の試験対策から思い出せるでしょう。

その他、水車の最大の敵は「キャビテーション」と「水撃作用」と瞬時に反応してください。ここで、「比速度を上げるデメリットはどっちか?」となれば、キャビテーションです。

論説が絡むと、答えのストライクゾーンが一気に広がるので、必ずしも標準回答の通りに書く必要はないです。試験対策するうえでは、「標準回答以外にも何か適する回答があるのかな」と考えてみると、体系的な知識を得ることができます。

小問(3):発電機の極数

小問(2)で$p=16$と導出済み。

(答)16極

おすすめ参考書

Amazonで参考書を販売しています。

▼電験2種 二次試験用はこちら▼

【令和6年度版】電験2種 二次試験 電力・管理 10年間のの過去問解説
価格:3,980円
内容:電験2種 二次試験 電力・管理の最新10回分
(令和5年~平成26年)の過去問解説
電験2種 二次試験 直前対策の超薄型参考書(重要公式集)
価格:2,490円
内容:重要公式が一目でわかる、40ページでまとめた参考書。
フルカラー印刷。
時短にもなる、電験2種 二次試験の必携参考書です。
タイトルとURLをコピーしました