令和5年度 上期 電験3種 機械 問7の過去問解説

令和5年度 上期 電験3種 機械 問7

電動機と負荷の特性を、回転速度を横軸、トルクを縦軸に描く、トルク対速度曲線で考える。電動機と負荷の二つの曲線がどのように交わるかを見ると、その回転数における運転が安定か不安定かを判定することができる。誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) 負荷トルクよりも電動機トルクが大きいと回転は加速し、反対に電動機トルクよりも負荷トルクが大きいと回転は減速する。回転速度一定の運転を続けるには、負荷と電動機のトルクが一致する安定な動作点が必要である。

(2) 巻線形誘導電動機では、回転速度の上昇とともにトルクが減少するように、二次抵抗を大きくし、大きな始動トルクを発生させることができる。この電動機に回転速度の上昇とともにトルクが増える負荷を接続すると、両曲線の交点が安定な動作点となる。

(3) 電源電圧を一定に保った直流分巻電動機は、回転速度の上昇とともにトルクが減少する。一方、送風機のトルクは、回転速度の上昇とともにトルクが増大する。したがって、直流分巻電動機は、安定に送風機を駆動することができる。

(4) かご形誘導電動機は、回転トルクが小さい時点から回転速度を上昇させるとともにトルクが増大、最大トルクを超えるとトルクが減少する。この電動機に回転速度でトルクが変化しない定トルク負荷を接続すると、電動機と負荷のトルク曲線が2点で交わる場合がある。この場合、加速時と減速時によって安定な動作点が変わる。

(5) かご形誘導電動機は、最大トルクの速度より高速な領域では回転速度の上昇とともにトルクが減少する。一方、送風機のトルクは、回転速度の上昇とともにトルクが増大する。したがって、かご形誘導電動機は、安定に送風機を駆動することができる。

解答・解説

正解(4)

(1)正しい

回転数が一定になるにはトルクの総和が0になる必要があります。

よって、電動機トルクと負荷トルクが等しい時に回転数が一定になります。

また、電動機トルクが上回れば回転数は上昇し、負荷トルクが上回れば回転数は減少します。

(2)正しい

巻線形誘導電動機では、比例推移によって最大トルクの発生する滑りを制御できます。

最初は二次抵抗を大きくすることで始動トルクを大きくし、回転数上昇とともに二次抵抗を小さくしていくことで速度制御を行います。

点線に示すように、速度が上昇するにつれてトルクが大きくなる負荷を接続したとき、下図のように安定な動作点において回転することが分かります。

(3)正しい

直流分巻電動機は、回転数が上昇すればトルクは減少します。

送風機は回転数が上昇すればトルクは増加します。これらの釣り合う点において、安定的に回転します。

(4)誤り

下図にかご形誘導電動機のトルク特性と、一定トルク負荷を接続したときの動作点を示します。

安定な動作点では、誘導電動機が加速すれば負荷トルクが勝つので減速し、誘導電動機が減速すれば電動機トルクが勝つので加速します。

よって、動作点で安定的に回転することが分かります。

一方、不安定な動作点においては、誘導電動機が加速すれば電動機トルクが増加し、さらに加速します。

また誘導電動機が減速すれば、トルクも小さくなるので余計に電動機が減速します。

このように、ほんの少しでも擾乱が生じれば回転数が大幅に変動してしまうので、不安定な動作点ということができます。

よって、加速時も、減速時も、どちらも滑りの小さいほうの動作点でしか安定しないので、「加速時と減速時によって安定な動作点が変わる」が誤った記述になります。

(5)正しい

かご形誘導電動機は、最大トルクの速度より高速な領域では回転速度の上昇とともにトルクが減少します。

送風機は速度の上昇とともにトルクが上昇するので、安定して駆動できます。よって、正しい記述です。

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