令和5年度 上期 電験3種 機械 問16の過去問解説

令和5年度 上期 電験3種 機械 問16

図1は、単相インバータで誘導性負荷に給電する基本回路を示す。負荷電流$i_o$と直流電流$i_d$は図示する矢印の向きを正の方向として、次の(a)及び(b)の問に答えよ。

図1

(a) 出力交流電圧の1周期に各パワートランジスタが1回オンオフする運転において、図2に示すように、パワートランジスタ$S_1$~$S_4$のオンオフ信号波形に対して、負荷電流$i_o$の正しい波形が(ア)~(ウ)、直流電流$i_d$の正しい波形が(エ)、(オ)のいずれかに示されている。その正しい波形の組合せを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1)(ア)と(エ)  (2)(イ)と(エ)  (3)(ウ)と(オ)
(4)(ア)と(オ)  (5)(イ)と(オ)

(b) 単相インバータの特徴に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) 図1は電圧形インバータであり、直流電源Eの高周波インピーダンスが低いことが要求される。
(2) 交流出力の調整は、$S_1$~$S_4$に与えるオンオフ信号の幅$\frac{T}{2}$を短くすることによって交流周波数を高くすることができる。又は、$E$の直流電圧を高くすることによって交流電圧を高くすることができる。
(3) 図1に示されたパワートランジスタを、IGBT又はパワーMOSFETに置換えてもインバータを実現できる。
(4) ダイオードが接続されているのは負荷のインダクタンスに蓄えられたエネルギーを直流電源に戻すためであり、さらにダイオードが導通することによって得られる逆電圧でパワートランジスタを転流させている。
(5) インダクタンスを含む負荷としては誘導電動機も駆動できる。運転中に負荷の力率が低くなると、電流がダイオードに流れる時間が長くなる。

図2

解答・解説

正解(a):(1)、(b):(4)

(a)

●負荷電流について

$S_1$と$S_4$がオンの時負荷電流は正の電流が流れようとします。

つまり電流は正の方向に大きくなります。

$S_2$と$S_3$がオンの時負荷電流は負の電流が流れようとします。つまり電流は負の方向に大きくなります。

よって、この条件を満たすのは(ア)になります。

(イ)も(ウ)も、電流の増減が上記の挙動とは逆の波形になっているので、誤りです。

●直流電流について

直流電流は、スイッチ$S_1$と$S_4$がオンの時、負荷電流と同じ波形となります。

よって、正しいのは(エ)です。

以上より、正解は(1)です。

(b)

(1)正しい

図1は電圧形インバータを示す回路図です。

電流源であれば、電圧源の部分が電流源となります。

(2)正しい

スイッチの切り替えを高速に行えば高周波な交流が出力できます。

また、電源電圧を大きくすれば、交流電圧は大きくなります。

(3)正しい

オン・オフ制御できる素子であれば何でもOKです。

(4)誤り

ダイオードはインダクタンスのエネルギーを電源側に戻す(回生する)効果をもちますが、パワートランジスタの転流とは関係がありません。

もしダイオードがなければ、電流が回生する経路が遮断されるので、パワートランジスタに異常電圧が発生し、破損する場合があります。

(5)正しい

誘導電動機を駆動できます。

力率が悪くなると、交流電圧と交流電流の位相差が大きくなるので、ダイオードに流れる電流が多くなります。

タイトルとURLをコピーしました