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この記事では、無限に長いソレノイドが作る磁界について、アンペールの法則から導出する方法を説明します。
無限に長いソレノイドの作る磁界の要点
無限に長いソレノイドに、$1\left[{\rm m}\right]$あたり$N$回のコイルが巻かれ、そこに電流$I\left[{\rm A}\right]$が流れているとき、ソレノイドの内部には、
$$H=NI$$
の磁界が発生している。
また、ソレノイドの外部では磁界は存在せず、$H=0$である。
無限に長いソレノイドが作る磁界の成分の考察
ソレノイドの作る磁界は、ソレノイドと平行な成分のみであることが知られていますが、
- ソレノイドの円周方向
- ソレノイドの半径方向
には磁界が発生しないことを説明しておきます。
ソレノイドの円周方向に磁界が存在しない理由
ソレノイドにおいて、電流はソレノイドの円周方向に回転しています。
アンペールの右ねじの法則から、右ねじが電流の方向と同じ向きに進むとき、ねじを回す方向に磁界が生じるので、電流と磁界が同一方向に向くことはありません。
そのため、ソレノイドの円周方向には磁界が存在しないことが分かります。
ソレノイドの半径方向に磁界が存在しない理由
ソレノイドの半径方向に磁界が存在しないことについては、磁束の連続性を考慮すれば理解できます。
図1に、無限に長いソレノイドが作る磁界について、一部を拡大したものを示しています。
この時、緑の丸で示した部分では、隣り合う電流からの磁界が互いに打ち消しあって、磁界が存在していないことが分かります。
図1 ソレノイドの作る磁界
もし、ソレノイドの半径方向に磁界がったとすれば、その磁界はいったいどこから来たのでしょうか?
無限に長いソレノイドの緑の点においては、磁界は0、つまり磁束は存在しません。
この状況で、ソレノイドの半径方向の磁束が、N極を出発し、S極に戻るという基本ルールを満たすことができないので、磁束が存在しません。
よって、半径方向の磁束は存在しないことが分かります。
図2 ソレノイドの半径方向に磁界は存在しない理由
アンペールの法則の適用
ここまで考えれば、ソレノイドの磁界はソレノイドと平行な成分のみを考えればいいことが分かります。
ソレノイドの外部にアンペールの法則を適用
まず、ソレノイドの外部に対し、アンペールの法則を適用してみます。
この時、四角形ABCDにおいて、閉曲線内部に電流が存在しません。
そのため、磁界の発生はないので、ソレノイドの外部では磁界が0であることが分かります。
図3 ソレノイドの外部へのアンペールの法則の適用
ソレノイドのコイルを挟んでアンペールの法則を適用
次に、ソレノイドのコイルを挟んでアンペールの法則を適用してみます。
ソレノイドの半径方向に磁界は存在しないので、AB間とCD間には磁界が存在しません。
さらに、先ほどソレノイドの外部でアンペールの法則を適用した結果、ソレノイドの外側には磁界が存在しないことが分かったので、AD間にも磁界は存在しません。
最終的に、磁界が存在するのはBC間になり、閉曲線ABCD内部には$NI$の電流が貫いているので、アンペールの法則から、
$$H・\overline{BC}=NI$$
$\overline{BC}=1$より、
$$H=NI$$
とわかります。
図4 ソレノイドのコイルを挟む形でのアンペールの法則の適用
ソレノイドの内部にアンペールの法則を適用
最後に、ソレノイドの内部にアンペールの法則を適用してみます。
ソレノイドの半径方向に磁界は存在しないので、AB間とCD間には磁界は存在しません。
磁界が存在するのは、AD間とBC間です。
また、閉曲線ABCDで囲まれた中に電流は存在しないので、アンペールの法則の右辺は0になります。
よって、周回積分の符号に注意して、
$$H_{BC}・\overline{BC}-H_{AD}・\overline{AD}=0$$
$$\overline{BC}=\overline{AD}$$
なので、
$$H_{BC}=H_{AD}$$
つまり、ソレノイド内部の磁界は一様であることが分かりました。
図5 ソレノイドの内部でのアンペールの法則の適用
まとめ
ここまでの話で、ソレノイドの作る磁界は、ソレノイドと平行な成分のみが存在し、ソレノイド内部の磁界は一様であることが分かりました。
そして、その磁界の大きさは、$1\left[{\rm m}\right]$あたり$N$回巻のコイルに電流$I\left[{\rm A}\right]$が流れていれば、
$$H=NI$$
であることもわかります。
ソレノイドの外部や、並行成分以外の磁界は存在しません。
アンペールの法則で考えられる内容になっているので、ぜひ参考にしてください。