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今回は、ラプラス変換の初期値定理と最終値定理の公式と導出を説明します。
目次
初期値定理と最終値定理の公式
初期値定理と最終値定理は$s$領域の関数について、$t=0$における初期値と、$t=\infty$における最終値について、時間領域に変換しなくても$s$領域のまま計算できる定理のことです。
$s$領域の関数$X(s)$に$s$をかけて、
- 初期値を求める時は$s→\infty$
- 最終値を求める時は$s→0$
を計算します。
時間領域の感覚とは真逆の方向に$s$の値を飛ばします。
初期値定理
$$x(0)=\lim_{s→\infty} sX(s)$$
時間領域では$t=0$ですが、$s$領域では$s→\infty$に飛ばします。
最終値定理
$$x(\infty)=\lim_{s→0} sX(s)$$
時間領域では$t→\infty$ですが、$s$領域では$s→0$に飛ばします。
導出・証明
初期値定理も最終値定理も、微分に関するラプラス変換である、
$$\mathcal{L}\left[\frac{dx(t)}{dt}\right]=\int_{0}^{\infty}\frac{dx(t)}{dt}e^{-st}dt=sX(s)-x(0)\tag{1}$$
から計算できます。
初期値定理
式(1)について、
$$x(0)=sX(s)-\int_{0}^{\infty}\frac{dx(t)}{dt}e^{-st}dt\tag{2}$$
ですが、両辺の$s$を$\infty$まで飛ばせば、
$$\lim_{s→\infty}x(0)=\lim_{s→\infty} sX(s)-\lim_{s→\infty} \int_{0}^{\infty}\frac{dx(t)}{dt}e^{-st}dt\tag{3}$$
であり、$e^{-st}$は$s→\infty$で0になるので、
$$\lim_{s→\infty} \int_{0}^{\infty}\frac{dx(t)}{dt}e^{-st}dt=0\tag{4}$$
となるため、
$$x(0)=\lim_{s→\infty}sX(s)\tag{5}$$
となって、初期値定理が導かれます。
最終値定理
式(1)について、$s→0$に飛ばせば、
$$\lim_{s→0} \int_{0}^{\infty}\frac{dx(t)}{dt}e^{-st}dt=\lim_{s→0} sX(s)-\lim_{s→0}x(0)\tag{6}$$
となり、この時$e^{-st}$は$s→0$で1になるので、
$$\lim_{s→0} \int_{0}^{\infty}\frac{dx(t)}{dt}・1dt=x(\infty)-x(0)\tag{7}$$
になります。
これより、
$$x(\infty)-x(0)=\lim_{s→0} sX(s)-x(0)\tag{8}$$
となり、
$$x(\infty)=\lim_{s→0}sX(s)\tag{9}$$
となって、最終値定理が導かれます。
まとめ
ここまで、ラプラス変換における初期値定理と最終値定理の導出も含めて説明してきました。
初期値定理はあまり使わないですが、最終値定理はフィードバック制御系の定常偏差の計算などで頻出です。
$s$領域の関数$X(s)$に$s$をかけて、
- 初期値を求める時は$s→\infty$
- 最終値を求める時は$s→0$
といったように、時間領域の感覚とは真逆の方向に$s$の値を飛ばすことに注意して、使いこなしてください。
以上、初期値定理と最終値定理について、参考になれば幸いです。