みなさん、こんにちは!
ブリュの公式ブログ.org(for Academic Style)にお越しいただきまして、ありがとうございます!
今回は、変圧器の効率と最大効率、および全日効率の計算方法について説明します。
目次
実測効率と規約効率
変圧器には、実測効率と規約効率という2つの効率があります。
$$実測効率=\frac{出力}{入力}$$
$$規約効率=\frac{出力}{出力+損失}$$
実測効率は、文字通り実際に入出力を測定して計算する効率です。
規約効率は、計算上で求められる効率になります。
電気主任技術者試験をはじめとするテスト問題では、入出力の測定なんてできませんから、当然規約効率を計算することになります。
以後、このページでは、規約効率の計算方法について説明を行います。
変圧器における可変損(銅損)と不変損(鉄損)
変圧器の損失には、鉄損と銅損があります。
可変損(銅損)
可変損とは、負荷が変化したときに一緒に変化する損失のことです。
例えば、負荷が変動すると、負荷電流が変化しますが、銅線の発熱量(損失=銅損)は負荷電流とともに変化します。
つまり、銅損のように負荷の変化とともに変化する損失を、可変損と呼びます。
変圧器の1次側に換算したL型等価回路で見てみましょう。
負荷電流は赤の線で描いたループ電流になるいます。
この負荷電流が変化すると、
- 1次巻線:$r_1$
- 2次巻線:$n^2r_2$
による損失が生じます。
これが、可変損です。
各種参考書では、可変損を銅損と表記しているものが多いですが、あまり正確ではないように思います。
確かに銅損は可変損ですが、可変損は銅損だけではありません。
この考え方は、後述する変圧器の最高効率の計算で効いてくる概念ですので、正確に理解したほうがいいでしょう。
不変損(鉄損)
変圧器の励磁電流など、負荷の有無にかかわらず発生する損失を、不変損といいます。
L型等価回路で見ると、励磁回路を流れる水色の電流ループが不変損(鉄損)になります。
負荷電流が変化しても、鉄損は変化しないので、負荷によらず一定の損失であることは、回路上からも明らかでしょう。
変圧器の2次側を開放し、変圧器に接続している負荷が0であっても、二次側には電圧が発生しています。
この二次側の電圧は、変圧器の鉄心内部で時間変化する磁束によるものです。
磁束は、電流が流れることによって生じます。
この二次側に電圧を発生させるための電流が一次側に流れており、これが励磁電流であり鉄損ということになります。
励磁電流は一次側の損失であり、負荷の接続の有無にかかわらず、変圧器が動作している間は一定に発生している損失です。
なお、より厳密なT型等価回路で見た場合、励磁電流は1次側巻線インピーダンスにも流れていますが、励磁電流は負荷電流よりも小さいため、細かいことは無視されています。
変圧器の効率の計算と最大効率の導出
変圧器の効率計算
変圧器の効率は、次の式で計算ができます。
$$\$eta=\frac{Wcos\theta}{Wcos\theta+P_i+P_{cn}}$$
ここで、
- $W$:出力
- $cos\theta$:負荷力率
- $P_i$:不変損(鉄損)
- $P_{cn}$:全負荷時の可変損(銅損)
となります。
日本語で書き換えると、
$$効率=\frac{出力中の有効電力}{出力中の有効電力+鉄損+全負荷時の銅損}$$
となります。
出力は皮相電力ではなく、有効電力のみであることに注意してください。
変圧器の損失は、可変損と不変損だけですから、上記の効率の式は、当たり前といえば当たり前な式です。
ただ、可変損は電流の2乗に比例する、つまり皮相電力の2乗に比例するところが引っかけとしてよく出題されるので、ご注意ください。
可変損=銅損=$RI^2$と考えておけば、間違いを防げます。
最大効率と可変損, 不変損の関係
変圧器において、
- 出力:$VIcon\theta$
- 可変損:負荷電流の2乗に比例($RI^2$)
- 不変損:一定($W$)
とします。
このとき、変圧器の効率$\eta$は、
$$\eta=\frac{VIcos\theta}{VIcos\theta+W+RI^2}$$
となります。
これを、分母分子を$I$で割ると、
$$\eta=\frac{Vcos\theta}{Vcos\theta+\frac{W}{I}+RI}$$
となります。
ここで、効率を最大にするのであれば、$\frac{W}{I}+RI$が最小になればOKです。
つまり、微分=0のタイミングで最大効率になるので、
$$y=\frac{W}{I}+RI$$
$$\frac{dy}{dI}=-\frac{W}{I^2}+R=0$$
つまり、$W=RI^2$の時に最大効率になります。
- 可変損:負荷電流の2乗に比例($RI^2$)
- 不変損:一定($W$)
ですから、可変損と不変損が等しくなった時に、最大効率になります。
変圧器だけであれば、銅損=鉄損の時最大効率を覚えておけば問題はないです。
しかし、可変損と不変損と覚えておけば、例として直流分巻発電機場合、
- 可変損:電機子電流
- 不変損:励磁電流
などといった切り分けも可能であり、応用が利くようになります。
お試しあれ。
変圧器の全日効率
変圧器の全日効率は、電力量に変換することで計算できます。
なお、鉄損については、変圧器の動作中は負荷に依らず一定に損失が発生するので、24時間を乗じています。
全日効率は例題を見たほうがわかりやすいので、例題を1問あげておきます。
全日効率の例題です。
定格出力50kVA、鉄損500W、全負荷銅損800Wの変圧器を、力率80%で1日のうち10時間だけ50%負荷で稼働させたときの全日効率は何%か?
1日の電力量$P$は、
- 定格容量50kVA
- 力率80%
- 50%負荷
- 10時間運転
より、
$$P=50×0.8×0.5×10=200kWh$$
銅損$P_c$は、全負荷銅損800W、50%負荷(皮相電力に対して50%であることに注意)より、
$$P_c=0.5^2×0.8=0.2kW$$
10時間運転より、1日の銅損による損失量は、$0.2×10=2kWh$
鉄損$P_i=500W$であり、鉄損は24時間一定なので、1日の鉄損による損失量は、$0.5×24=12kWh$
よって、
$$\eta=\frac{200}{200+12+2}=0.9345$$
よって答えは93.4%となります。
まとめ
ここまで、変圧器の効率、可変損(銅損)と不変損負(鉄損)、そして最大効率と全日効率の計算方法について紹介してきました。
変圧器の効率の計算は比較的イメージしやすい式になっていますが、銅損については皮相電力の2乗に比例することだけは気を付けてください。
あと、本文中で紹介しましたが、最大効率について、変圧器では銅損=鉄損の関係ですが、厳密には可変損=不変損と理解するほうが正確です。
この先、直流分巻発電機などの最大効率を考える際にも、この部分が大事になります。
以上、変圧器の効率計算について、参考になれば幸いです。
関連する本
ブリュの公式ブログでは本を出版しています。
本記事で紹介した、「変圧器の効率と最大効率および全日効率」については、以下の書籍に記載しています。
著者:ブリュの公式ブログ
出版:BOOKs Project
・電験2種 2次試験 機械・制御対策の決定版
・カラー印刷
・Amazonのみで販売中!
変圧器の記事一覧