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今回は直流機の種類について紹介します。
直流機には、
- 他励式
- 直巻
- 分巻
- 複巻外分巻
- 複巻内分巻
があります。
特長などについて紹介します!
目次
電動機と発電機は同じもの
直流機に限らず、電動機と発電機は同じものです。
外部から機械的なエネルギーを入力し、電気エネルギーに変換するものが発電機、電気エネルギーを入力し、機械的なエネルギーを生み出すのが電動機です。
電車を例にすれば、直流電動機やかご形三相誘導電動機が使用されていますが、この駆動用の電動機も、時には発電機として動作させます。
例えば、長い下りが続く路線では、下りの電車が発電して架線に電気を供給し、上りの電車に電気エネルギーを供給するなど、省エネ化がすすめられています。
図1 電気鉄道における上り電車と下り電車の電力の授受
では、直流機の基本式として、理想的に界磁$\Phi\propto I_f$の関係があるとすれば、発電機の誘導起電力が、
$$E=\frac{p}{a}Z\Phi\frac{N}{60} \tag{1}$$
すなわち、
$$E\propto N I_f \tag{2}$$
であり、
電動機の発生トルクが、
$$T=\frac{p}{2\pi a}Z\Phi I_a \tag{3}$$
すなわち、
$$T\propto I_f I_a \tag{4}$$
であることをベースに、それぞれの巻線方式の特徴を見ていきます。
他励式直流電動機/他励式直流発電機
もっともスタンダードな直流機が、他励式です。
励磁そのものは別電源を用意し、
- 電機子電流を流す電源
- 界磁電流を流す電源
という、合計2個の電源によって駆動します。
他励式のメリットは、電機子電流と界磁電流を別々に制御できるので、理想的な直流機の特性が得られることです。
一方で、電源が2個必要なのでコストがかさみ、またサイズ面でも不利なので、あまり採用例は多くないように思います。
図2 直流他励電動機/発電機
直流直巻電動機/直流直巻発電機
直巻は電機子巻線と界磁巻線を直列につなぎ、
$${\rm 電機子電流}={\rm 界磁電流}\tag{5}$$
とする方式です。
図3 直流直巻電動機/発電機
■直流直巻発電機の誘導起電力
直巻方式の回路図から明らかに${\rm 電機子電流}I_a={\rm 界磁電流}I_f$であるから、
$$E\propto N I_a \tag{6}$$
となります。
つまり直流直巻き発電機の場合、発電機の回転数と電機子電流(負荷電流)の積に比例した誘導起電力$E$が生じます。
■直流直巻電動機のトルク
同様に直巻き電動機の発生トルクは、
$$T\propto I_f^2=I_a^2 \tag{7}$$
となり、電動機に供給する電流の2乗に比例するトルクが得られます。
なお、直巻発電機は、電機子電流と界磁電流が同じであるため、非常に厳密な見方をすると、外部からの初期励磁なしでは発電を開始できません。
※励磁されていない界磁巻線の中で、電機子巻線が回転するだけになります。
しかし、実際には界磁鉄心に残留磁束があり、この残留磁束によって微弱な発電を行います。
この微弱な発電でさらに界磁電流が流れ、これを繰り返すことで定常運転になります。
直巻方式と残留磁束は非常に密接な関係があるので、覚えておいてください。
直流分巻電動機/直流分巻発電機
分巻方式は、界磁巻線と電機子巻線を並列に接続したものです。
図4 直流分巻電動機/発電機
■発電機の場合
直巻発電機と同様、残留磁束によって始動し、微弱な電機子電流が流れ、その一部が界磁巻線に流入し、界磁を強めます。
これを繰り返すことで定常運転に入ります。
特性としては、直流発電機の基本式そのままの
$$E\propto N I_f \tag{8}$$
ですが、界磁電流が端子電圧を$V$として、
$$I_f=\frac{V}{r_f} \tag{9}$$
で決まります。
■電動機の場合
外部電源によって電圧を印加し、端子電圧が$V$になったとき、電機子電流$I_a$と界磁電流$I_f$に分流します。
界磁電流は、発電機同様、
$$I_f=\frac{V}{r_f} \tag{10}$$
で決まります。
電動機の発生トルクが、
$$T\propto I_f I_a \tag{11}$$
で決まります。
電源電圧が一定であれば界磁電流も一定になるので、電動機の回転速度と界磁の大きさの依存関係は解消されます。
直流複巻外分巻電動機/直流複巻外分巻発電機
直巻と分巻の両方を組み合わせたものが複巻方式で、複巻方式のうち、分岐点が外側にあるものを複巻外分巻方式と呼びます。
電機子巻線と界磁巻線の関係次第ですが、直巻方式と分巻方式の中間的な特性となります。
図5 直流複巻外分巻電動機/発電機
なお、分巻方式は他励式や分巻式で起こりうる界磁喪失(界磁電流が0になると回転数が無限大に発散する異常)を防止する効果があります。
電機子巻線を界磁巻線の一部として使用するため、電機子電流が流れている間は解ぞ喪失は起こりません。
界磁喪失が起これば、同時に電機子電流も0になり、電動機は停止します。
※こうした界磁喪失の対策的な意味で設ける界磁巻線を安全巻線といいます。
直流複巻内分巻電動機/直流複巻内分巻発電機
直巻と分巻の両方を組み合わせたものが複巻方式で、複巻方式のうち、分岐点が内側にあるものを複巻内分巻方式と呼びます。
外分巻と同様、電機子巻線と界磁巻線の関係次第ですが、直巻方式と分巻方式の中間的な特性となります。
図6 直流複巻内分巻電動機/発電機
まとめ
ここまで、直流機の巻線の種類について、巻線方式の違いを重点的に説明してきました。
最近では直流機はブラシ・整流子の摩耗が大きく、メンテナンスコストがかさむため、徐々に同期電動機、あるいは誘導電動機に置き換えられてきています。
最近の電車で、加速時に高周波な高音がなるタイプが増えていますが、それらの電車はほぼ誘導電動機です。
少しずつ見る機会も減ってくる直流機ですが、走行時に重低音のなる電車はおそらく直流機が採用されているので、走行音の違いなども聞き分けてみると楽しみが増えます。
一般的に、
- 自動車:同期電動機
- 電車:かご形三相誘導電動機
といった使い分けがあります。
以上、直流機の種類について、参考になれば幸いです。
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