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今回は、直流機の基本公式についてまとめます。
直流機は、電気を取り出せば直流発電機であり、電気を与えれば直流電動機になります。
発電機と電動機、実は全く同じ構造であり、直流機の見る方向を変えているだけなんですね。
つまり、直流発電機・直流電動機ともに基本公式は共通です。
この記事では、直流機の基本公式について、できるだけ暗記量を減らせるような形でまとめました。
目次
直流機の基本公式
直流機の基本公式として、電機子巻線部の誘導起電力が、
$$E=\frac{p}{a}Z\Phi\frac{N}{60} \tag{1}$$
ここで、
- $p$:極数
- $\Phi$:毎極の磁束
- $Z$:電機子導体数
- $a$:並列回路数$\begin{cases}{\rm 波巻の場合:}a=2\\ {\rm 重ね巻の場合:}a=p({\rm 極数})\end{cases}$
- $N$:回転速度[rpm]
となります。
直流機は文字通り直流ですから、誘導機や同期機のように、力率や無効電力、ベクトル図を考える必要はありません。
基本的に、巻線部の起電力さえわかってしまえば、あとは単純な直流回路の計算と力学的なエネルギーの演算だけで、ほとんどの問題が解けてしまいます。
では、上記の起電力の式だけを知っている前提で、直流発電機の電気出力と、直流電動機の機械出力を見ていきましょう。
直流発電機の出力電力
直流発電機の等価回路は、図1のようになります。
図1 直流発電機の等価回路
図1から、電機子に発生する誘導起電力は、
$$E=V+r_a I_a \tag{2}$$
です。
また、負荷に供給する電力$P_o$は、端子電圧×負荷電流であり、
$$P_o=VI_a \tag{3}$$
と計算できるほか、入力エネルギー$P_i$から銅損$r_aI_a^2$を引いたものとも計算できるので、
$$P_o=P_i-r_aI_a^2 \tag{4}$$
とも計算できます。
直流電動機の機械出力
直流電動機の等価回路は図2のようになります。
図2 直流電動機の等価回路
図2から、電機子電流$I_a$のとき、速度起電力$E$が生じていれば、直流電動機の端子電圧$V$は、
$$V=E+r_a I_a \tag{5}$$
となります。
また、直流電動機の機械出力$P_o$は誘導起電力$E$と電機子電流$I_a$の積なので、
$$P_o=EI_a \tag{6}$$
であるほか、入力エネルギー$P_i$と銅損$r_aI_a^2$の差でも計算できるので、
$$P_o=P_i-r_aI_a^2 \tag{7}$$
となります。
また、トルクは、
$$T=\frac{P}{2\pi \frac{N}{60}}=\frac{1}{2\pi \frac{N}{60}}EI_a \tag{8}$$
であるから、式(1)より、
$$\begin{align}
T&=\frac{1}{2\pi \frac{N}{60}}\frac{p}{a}Z\Phi\frac{N}{60}I_a\\
&=\frac{pZ\Phi}{2\pi a}I_a\\
&\propto I_f I_a \tag{9}
\end{align}$$
となります。
式(9)においては、磁束$\Phi$と界磁電流$I_f$は比例する関係を利用しています。
つまり、直流電動機のトルクは界磁電流$I_f$と電機子電流$I_a$の積に比例します。
この辺りが、直流機の種類である、
- 他励
- 直巻
- 分巻
- 複巻外分巻
- 複巻内分巻
の特性の違いになります。
直流機の種類については、以下の記事を参照してください。
直流電動機の界磁喪失
直流電動機の端子電圧は、式(1)と式(5)から、
$$\begin{align}
V&=E+r_aI_a\\
&=\frac{p}{a}Z\Phi\frac{N}{60}+r_aI_a \tag{10}
\end{align}$$
で、
$$N=\frac{60a}{pZ}\frac{V-r_aI_a}{\Phi} \tag{11}$$
となり、$\Phi→0$で$N→\infty$に発散します。
一方で、トルク$T$においては、式(9)を見れば、$I_f→0$で$T→0$になります。
すなわち、直流電動機が運転中のとき、界磁電流が0になれば回転数が∞に発散する一方で、トルクは0に収束しますが、もし無負荷運転などを行っていれば、残留磁束によるトルクが回転抵抗を上回って、回転数が異常に上昇します。
この状況を界磁喪失といいます。
界磁喪失は、直流他励電動機や、直流分巻電動機において、何かの拍子に界磁電流のみが遮断された場合に起こりえます。
界磁喪失の対策として、電機子電流の一部によって界磁を発生させればよく、電機子電流が流れているときに界磁が0となる状況を防止する安全巻線を設置するなどの対策が行われます。
まとめ
ここまで、直流機の基本公式について説明してきました。
誘導起電力の式である式(1)だけは覚えておく必要がありますが、それ以外の式は一般的な物理量の計算と、直流回路の計算になります。
このため、直流機はほかの電動機(誘導電動機や同期電動機)と比較しても非常にシンプルなので、確実に理解しておきましょう。
なお、直流機にはブラシと整流子があり、電気的な接続部分に常に摩擦が生じながら回転しています。
この辺りが、
- 接触部分の鏡面状態の維持
- 摩耗対策
などでコストがかさむため、電車などでも採用例が減っています。
現在の電車では、かご形三相誘導電動機が主流なので、一緒に確認してみてください。
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