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この記事では、令和3年度 電験2種 2次試験 機械・制御 問1の過去問解説をします。
この問題は、誘導電動機の最大トルクの計算に関する問題です。
計算手順そのものは単純なのですが、計算式が複雑になりやすいので、計算間違いに注意してください。
なお、当ブログでは、誘導電動機の最大トルクの導出で計算方法を紹介します。
同時に誘導電動機の最大トルクについても確認しておくことをお勧めします。
目次
令和3年度 電験2種 2次試験 機械・制御 問1 問題文
滑り$s$で運転している三相誘導電動機の星形結線一相当たりのL形等価回路を下図に示す。回路定数はそれぞれ以下のとおりである。ただし、等価回路の端子電圧(相電圧)を$V_1$、入力電流を$I_1$、電源周波数を$f$、極対数を$p$とし、等価回路の励磁コンダクタンス$g_0$及び励磁サセプタンス$b_0$は無視できるものとする。
次の問については、図に記載されている記号を用いて答えよ。
(1)入力電流$I_1$の式を求めよ。
(2)機械的出力$P_0$の式を求めよ。
(3)同期角速度$\omega_s$を電源周波数$f$及び極対数$p$を用いて表せ。
(4)この誘導電動機の発生トルク$T$の式を求めよ。
(5)最大トルクが得られる滑り$s_m$の式を求めよ。
(6)最大トルク$T_m$の式を求めよ。
解答・解説
小問(1)
本問では解図1に示す通り、励磁回路の$g_0$及び$b_0$は無視できる。
解図1
$\dot{V_1}$を基準として、
$$\dot{I_1}=\frac{V_1}{r_1+\frac{r_2’}{s}+jx}\tag{1}$$
となる。よって、
$$\begin{align}
I_1&=\left|\dot{I_1}\right|\\
&=\frac{V_1}{\left(r_1+\frac{r_2’}{s}\right)^2+x^2}\tag{2}
\end{align}$$
となる。
(答)$I_1=\frac{V_1}{\left(r_1+\frac{r_2’}{s}\right)^2+x^2}$
小問(2)
機械的出力は、解図1における等価回路の$\frac{1-s}{s}r_2’$で消費される電力に相当するから、
$$\begin{align}
P_0&=3\frac{1-s}{s}r_2’I_1^2\\
&=3\frac{1-s}{s}r_2’\left(\frac{V_1}{\sqrt{\left(r_1+\frac{r_2’}{s}\right)^2+x^2}}\right)^2\\
&=3\frac{1-s}{s}r_2’\frac{V_1^2}{\left(r_1+\frac{r_2’}{s}\right)^2+x^2}\tag{3}
\end{align}$$
となる。
(答)$P_0=3\frac{1-s}{s}r_2’\frac{V_1^2}{\left(r_1+\frac{r_2’}{s}\right)^2+x^2}$
小問(3)
同期速度$N_s$について、極対数$p$とすれば、
$$N_s=\frac{60}{p}f\left[{\rm min^{-1}}\right]\tag{4}$$
である。1回転で$2\pi\left[{\rm rad}\right]$なので、
$$\begin{align}
ω_s&=2\pi N_s\\
&=2\pi\frac{60}{p}f\\
&=\frac{120}{p}\pi f \left[{\rm rad/min}\right]\\
&=\frac{2}{p}\pi f\left[{\rm rad/s}\right]\tag{5}
\end{align}$$
となる。
(答)$\omega_s=\frac{2}{p}\pi f$
小問(4)
出力$P_0$とトルク$T$の関係は、
$$P_0=\left(1-s\right)ω_sT\tag{6}$$
であるから、
$$\begin{align}
T&=\frac{P_0}{\left(1-s\right)ω_s}\\
&=\frac{3\frac{1-s}{s}r_2’\frac{V_1^2}{\left(r_1+\frac{r_2’}{s}\right)^2+x^2}}{(1-s)\frac{2}{p}\pi f}\\
&=\frac{3pr_2′}{2\pi f}\frac{1}{s}\frac{V_1^2}{\left(r_1+\frac{r_2’}{s}\right)^2+x^2}\tag{7}
\end{align}$$
となる。
(答)$T=\frac{3pr_2′}{2\pi f}\frac{1}{s}\frac{V_1^2}{\left(r_1+\frac{r_2’}{s}\right)^2+x^2}$
小問(5)
小問(4)において求めたトルクの式の分母のうち、sに関する項を$y\left(s\right)$とおけば、
$$y\left(s\right)=s\left\{\left(r_1+\frac{r_2’}{s}\right)^2+x^2\right\}\tag{8}$$
であり、$y\left(s\right)$が最小のとき、トルク$T$が最大となる。
$y\left(s\right)$が最小となる条件は、微分係数が0の時であり、
$$\begin{align}
\frac{dy\left(s\right)}{ds}&=\left(r_1+\frac{r_2′}{s}\right)^2+x^2+2s\left(r_1+\frac{r_2′}{s}\right)・\left(-\frac{r_2′}{s^2}\right)\\
&=0\tag{9}
\end{align}$$
$$r_1^2+x^2-\frac{r_2’^2}{s^2}=0\tag{10}$$
となるので、トルク$T$が最大となる滑り$s_m$は、
$$s_m=±\frac{r_2′}{\sqrt{r_1^2+x^2}}\tag{11}$$
となる。ここで、滑りは$s>0$であるので、
$$s_m=\frac{r_2’}{\sqrt{r_1^2+x^2}}\tag{12}$$
となる。
(答)$s_m=\frac{r_2’}{\sqrt{r_1^2+x^2}}$
小問(6)
小問(5)で求めた$s_m$を式(7)に代入すれば、最大トルク$T_m$は、
$$\begin{align}
T_m&=T|_{s=s_m}\\
&=\frac{3pr_2′}{2\pi f}\frac{1}{\frac{r_2’}{\sqrt{r_1^2+x^2}}}\frac{V_1^2}{\left(r_1+\frac{r_2’}{\frac{r_2’}{\sqrt{r_1^2+x^2}}}\right)^2+x^2}\\
&=\frac{3p}{2\pi f}\frac{\sqrt{r_1^2+x^2}}{\left(r_1+\sqrt{r_1^2+x^2}\right)^2+x^2}V_1^2\\
&=\frac{3p}{2\pi f}\frac{\sqrt{r_1^2+x^2}}{r_1^2+2r_1\sqrt{r_1^2+x^2}+r_1^2+x^2+x^2}V_1^2\\
&=\frac{3p}{4\pi f}\frac{\sqrt{r_1^2+x^2}}{r_1\sqrt{r_1^2+x^2}+r_1^2+x^2}V_1^2\\
&=\frac{3p}{4\pi f}\frac{V_1^2}{r_1+\sqrt{r_1^2+x^2}}\tag{13}
\end{align}$$
となる。
(答)$T_m=\frac{3p}{4\pi f}\frac{V_1^2}{r_1+\sqrt{r_1^2+x^2}}$
関連コンテンツ
この問題が難しいと感じたら、誘導電動機の特性式の説明記事で、誘導電動機のトルクを計算する方法を理解してください。
次に、誘導電動機の最大トルクの導出記事で、計算過程を追うことができればOKです。
加えて、誘導電動機の最大出力の導出までできれば完璧です。
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