一般に低圧配電方式として広く使用されている単相3線式について、次の問に答えよ。
(1)我が国の単相2線式($200{\rm V}$と$100{\rm V}$)と単相3線式を図で示し、単相3線式を用いた電力供給の特徴を、単相2線式と比較して利便性及び安全性の観点から200字程度で述べよ。ただし、小問(2)、(3)に関する特徴は除く。
(2)単相3線式は単相2線式と比較して電圧降下が小さいことを示したい。単相2線式と単相3線式とで$100{\rm V}$負荷を用いる場合、単相2線式の負荷電力と単相3線式の負荷電力の合計が等しい際の$100{\rm V}$負荷にかかる電圧降下について計算により比較せよ。ただし、単相3線式の各相間(電圧線と中性線との間)の負荷は等しいものとし、各方式で電線の太さは同一とし抵抗のみを考慮するものとする。
(3)単相3線式における中性線の欠相(断線)により発生する障害、欠相が生じる原因、及び障害の防止対策(防止策については二つ)について述べよ。
目次
解答・解説
小問(1):単相3線式と単相2線式の回路図と単相3線式の利点について
試験センター 解答
単相 2 線式(200Vと100V)と単相 3 線式を図1に示す。単相3線式では,図1に示すように電源の単相変圧器の中性点から中性線を引き出し,両外側の電圧線とともに3線で負荷に電力供給を行う。以下の特徴を持つ。
利便性:一つの系統から単相の100Vと200Vを取り出すことができ,100Vと200Vのどちらの機器も使用できる。
安全性:中性線が接地されているので,200V回路の対地電位は100Vとなることから,200V回路の安全性が高い。
単相2線式と単相3線式の回路図
単相2線式
解図1に示すように、2本の線で単相交流を供給するスタンダードな回路図になります。
![]() (a)単相2線式$200{\rm V}$ |
![]() (b)単相2線式$100{\rm V}$ |
解図1
単相3線式
解図2に示す通り、外側の2線で$200{\rm V}$を供給し、真ん中に中性線を設けることで、$100{\rm V}$も供給できる回路図になります。
単相3線式は$200{\rm V}$の供給が可能ですが、中性線が接地されているので、外側の配線の対地電圧はともに$100{\rm V}$となるので、安全性が高いです。
解図2
単相3線式の利便性と安全性
■利便性
単相3線式は、一つの系統から$100{\rm V}$と$200{\rm V}$を取り出すことができるため、$100{\rm V}$、$200{\rm V}$のどちらの機器も使用できます。
最近では家庭用エアコンでも省エネ化のために$200{\rm V}$機種も普及してきており、ブレーカー内部の結線を変更することで、普通のコンセントは$100{\rm V}$のまま、エアコン用コンセントのみ$200{\rm V}$機種に対応させたりといった使い方ができるようになっています。(配線工事には電気工事士の免状が必要です。電気主任技術者の免状では電気工事はできません。)
■安全性
単相3線式は、試験センター解答の図1(b)に示す通り$100{\rm V}$を2本引出し、その中間電圧を設置しています。
つまり、$200{\rm V}$は対地電圧$100{\rm V}$の2本の線(もっと言えば、対地電圧基準で見れば$100{\rm V}$と$-100{\rm V}$の線)に挟まれているので、各線の対地電圧は$100{\rm V}$です。$200{\rm V}$でありながら、電線の対地電圧を$100{\rm V}$にできるので、安全性が高まります。
小問(2):単相3線式と単相2線式の電圧降下の違い
解図3に示す通り、線路抵抗を$R$とし、それぞれ電圧$V_2$, 電流$I_2$、電圧$V_3$, 電流$I_3$となっているものとする。また負荷力率は$cos\theta$とし、$\theta$は非常に小さいものとする。
![]() (a)単相2線式 |
![]() (b)単相3線式 |
解図3
消費電力は等しいので、
$$V_2I_2cos\theta=2V_3I_3cos\theta$$
であるから、
$$\frac{I_2}{I_3}=2$$
となる。また、解図2より、
$$\begin{cases}
\Delta V_2=2RI_2\\
\Delta V_3=RI_3
\end{cases}$$
であるので、$\Delta V_2$と$\Delta V_3$の比率をとれば、式(2)、式(3)より、
$$\frac{\Delta V_3}{\Delta V_2}=\frac{I_3}{2I_2}=\frac{1}{4}$$
となり、単相3線式は、単相2線式と比べて電圧降下が$\frac{1}{4}$倍に抑えられる。
![]() (a)単相2線式の電圧降下 |
![]() (b)単相3線式の電圧降下 |
解図4
小問(3):中性線の欠相による障害と欠相が生じる原因・防止対策
試験センター 解答
■中性線の欠相により発生する障害
二つの100V回路の負荷が不平衡である時は,中性線が断線していると回路ごとの電圧に不平衡が生じることから,一方の100V回路で過電圧が生じ,他の回路では電圧が低下して,機器類の損傷・焼損及び誤動作などの障害を起こす恐れがある。
■中性線欠相の発生原因
中性線欠相の主な発生原因は,分電盤内の開閉器の端子等において接触が不完全になるものである。この接触不良は,工事施工不良によるねじ締めの不完全や,導体温度変化による導体の膨張・収縮や振動等により経年的な接触不完全への発展が考えられる。
防止対策(以下の具体的対策例の中から二つ記載されていればよい)
①開閉器類端子部の構造の改善
2ねじ方式,圧着端子方式等で長時間使用してもねじのゆるみが生じにくい構造とする。
②欠相保護機能付き漏電遮断器の採用
中性線欠相による過電圧発生時に回路を遮断する機能を持たせた漏電
遮断器を使用する。
③開閉器類設置時の対策
高温・多湿の場所,振動やじん埃のある場所への設置を極力避ける。また,端子締め付けに適した工具を用い,確実に施工・確認をする。
④既設開閉器類に対する対策
端子部の点検のほか,異臭,テレビ・ラジオの雑音,機器類の運転の異常,照明器具の明るさの異常などから,不良個所の早期発見に努め,処置する。
⑤バランサの採用
低圧線の末端にバランサ(単巻変圧器)を設置することで,中性線断線時
の電圧不平衡を大幅に軽減する。
中性線欠相時の障害
解図5に示す通り、中性線が欠落してしまった場合、単相$100\left[{\rm V}\right]$の負荷の2直列で$200\left[{\rm V}\right]$を分圧するため、単純にインピーダンス比によって$200\left[{\rm V}\right]$が分圧される形になります。
そのため、負荷が不平衡であれば、
- 一方は$100\left[{\rm V}\right]$以上に
- もう一方は$100\left[{\rm V}\right]$以下に
なることで、特に$100\left[{\rm V}\right]$以上になってしまった負荷の方は最悪の場合過電圧により焼損します。
解図5
バランサ
解図6に示すように、単相3線式の負荷端に取り付けた単相変圧器をバランサといいます。バランサを流れる電流は上下で等しいので、不平衡分を抑制できます。
解図6
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