令和元年度 電験2種 2次試験 機械・制御 問3の過去問解説(パワーエレクトロニクス 太陽光発電用昇圧チョッパと単相フルブリッジインバータの複合問題)

図は太陽光発電用電力変換器の回路図である。入力電圧は$V_d=200{\rm V}$で、直流インダクタのインダクタンスは$L_d=1{\rm mH}$である。一方、交流系統電圧$v_s$は実効値$V_s=200{\rm V}$、周波数$50{\rm Hz}$の正弦波電圧で、交流インダクタ$L_s$のリアクタンスは$X_s=3.5{\rm Ω}$である。直流コンデンサ$C$は十分に大きく電圧リプルは無視できる。$S_1$~$S_4$及び$S_d$のスイッチング周波数は$f_{sw}=10{\rm kHz}$で、スイッチング素子$S_d$のデューティ比は$D=0.5$一定とする。インバータは、正弦波PWM制御により系統電流$i_s$の基本波成分を$v_s$と同位相に制御するものとする。また、回路素子は全て理想的とし、損失は生じないものとする。次の問に答えよ。

(1)出力電力$P_s=4{\rm kW}$時の、系統電流$i_s$の基本波実効値$I_s$を求めよ。

(2)出力電力$P_s=4{\rm kW}$時の、交流インダクタ$L_s$に誘起する電圧の基本波実効値、及びインバータ交流端子電圧の基本波実効値を求めよ。

(3)出力電力$P_s=4{\rm kW}$時に$i_s$を制御するために必要な直流コンデンサ$C$の電圧$V_c$の条件を示せ。

(4)昇圧コンバータが電流連続モードで動作した場合、すなわち入力電流が常に$i_d>0$の場合のコンデンサ電圧$V_c$を求めよ。

(5)電流連続モードの場合、$i_d$のリプルのピーク ピーク値を求めよ。

(6)電流連続モードで動作できる出力電力$P_s$の条件を示せ。

解答・解説

小問(1)

問題文中に「系統電流$i_S$の基本波成分を$v_S$と同位相に制御する」と記載されているので、基本波成分について力率が$1$であることがわかる。

交流系統電圧実効値$V_S=200\left[{\rm V}\right]$に$P_S=4\left[{\rm kW}\right]$の有効電力を力率$1$で供給するので、

$$P_S=V_SI_S\tag{1}$$

$$4×10^3=200I_S\tag{2}$$

$$I_S=20\left[{\rm A}\right]\tag{3}$$

となる。

(答)$I_S=20\left[{\rm A}\right]$

小問(2)

インダクタ$L_S$の両端電圧は、$L_S$のリアクタンスが$X_S=3.5\left[{\rm Ω}\right]$、小問(1)より電流の基本波実効値が$I_S=20\left[{\rm A}\right]$であるので、

$$\begin{align}
X_SI_S&=3.5×20\\
&=70\left[{\rm V}\right]\tag{4}
\end{align}$$

と計算できる。ただし、解図1に示す通り、交流側の基本波に対するベクトル図において、$\dot{v_S}$より90°進んでいることに注意する。

解図1

解図1より、インバータ交流端子電圧の基本波実効値は、

$$\begin{align}
\sqrt{V_S^2+V_{LS}^2}&=\sqrt{200^2+70^2}\\
&=211.896201004\left[{\rm V}\right]\tag{5}
\end{align}$$

となる。

(答)インダクタ$L_S$電圧の基本波実効値:$70.0\left[{\rm V}\right]$、インバータ交流端子電圧:$212\left[{\rm V}\right]$

小問(3)

単相フルブリッジインバータの交流電圧出力$v$は、コンデンサ$C$の電圧$V_C$、変調率$a$として、

$$v=aV_Csin\omega t\tag{6}$$

となる。

つまり、インバータが出力できる最大電圧は$a=1$の時であり、直流電圧$V_C$の最低値は$a=1$の時に式(5)で求めた基本波実効値を出力できなければならない。

これより、波高値は実効値の$\sqrt2$倍であることに注意して、

$$\begin{align}
V_C&=\sqrt{2}×211.896201004\\
&=299.621228219\left[{\rm V}\right]\tag{7}
\end{align}$$

となる。

(答)$V_C≧300\left[{\rm V}\right]$

小問(4)

昇圧コンバータの出力電圧は、デューティ比を$\delta$として、

$$V_C=\frac{1}{1-\delta}V_d\tag{8}$$

となるので、本問の場合$\delta=0.5$、$V_d=200\left[{\rm V}\right]$であるから、

$$\begin{align}
V_C=\frac{1}{1-0.5}×200\\
&=400\left[{\rm V}\right]\tag{9}
\end{align}$$

となる。

(答)$V_C=400\left[{\rm V}\right]$

小問(5)

解図1に示すように、スイッチオンの時、インダクタL_dの両端電圧は、

$$V_d=L_d\frac{di_d}{dt}\tag{10}$$

であるから、

$$\frac{di_d}{dt}=\frac{V_d}{L_d}>0\tag{11}$$

となって、電流$i_d$は増加する。

一方、スイッチがオフのときは、インダクタL_dの両端電圧は、

$$V_d-V_c=L_d\frac{di_d}{dt}\tag{12}$$

であるから、

$$\frac{di_d}{dt}=-\frac{V_C-V_d}{L_d}<0\tag{13}$$

となって、電流$i_d$は減少する。

解図2

電流波形は、解図2に示すとおりであり、ピーク ピーク値(最大値と最小値の差)は、

$$\begin{align}
\frac{V_d}{L_d}×\frac{1}{f_{sw}}×0.5&=\frac{200}{1\times{10}^{-3}}×\frac{1}{10×{10}^3}×0.5\\
&=10\left[{\rm A}\right]\tag{14}
\end{align}$$

と計算できる。

解図2

(答)$10.0\left[{\rm A}\right]$

小問(6)

昇圧コンバータは、電流連続モードで運転するため、電流最小値は$0\left[{\rm A}\right]$以上でなければならない。

電流のピーク ピーク値は、小問(5)より$10\left[{\rm A}\right]$であり、最小値を$0\left[{\rm A}\right]$とすれば、平均電流は$5\left[{\rm A}\right]$となる。

この時、$P_S$の値は、

$$\begin{align}
P_S&=200×5\\
&=1000\left[{\rm W}\right]\\
&=1\left[{\rm kW}\right]\tag{15}
\end{align}$$

であり、電流を連続にしたまま出力できる最小の電力となる。

従って、

$$P_S>1.00\left[{\rm kW}\right]\tag{16}$$

となる。

(答)$P_S>1.00\left[{\rm kW}\right]$

本問においては、下の図のような波形がイメージできれば問題ないです。解図2との違いは、電流が連続する条件から、電流最小値を$0\left[{\rm A}\right]$に固定している点です。下の図を見れば、平均電流は$5\left[{\rm A}\right]$であると容易に分かるでしょう。

なお、電圧が$V_d$一定であるため、電流の実効値を計算する必要はありません。出力$P_S$の平均値を計算すれば、

$$\begin{align}
P_S=\frac{1}{T}\int_{0}^{T}V_di_ddt
=V_d・\frac{1}{T} \int_0^Ti_ddt
\end{align}$$

となるので、平均電流で電力を計算できます。

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