【令和3年度】電験2種 2次試験 電力・管理 問4

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今回は、令和3年度 電験2種 2次試験 電力・管理 問4の回答・解説を行います。

問題

分散型電源の系統連系に関して、次の問に答えよ。
図に示す6.6kV三相3線式高圧配電線の末端に、分散型電源を有する需要家が連系されている。

(1)需要家から配電線へ逆潮流(力率1)がある場合の、需要家端の相電圧(1線と中性点間の電圧)$\dot{E_r}$と変電所の相電圧$\dot{E_s}$の関係を示すベクトル図及び関係式を$\dot{E_s}$、$\dot{E_r}$、$\dot{I}$、$R$、$X$を用いて描け。ただし、ベクトル図は$\dot{E_r}$(位相0)を基準とし、電流$\dot{I}$は図中の矢印の向きを正とする。

(2)小問(1)のベクトル図から需要家端の線間電圧値を求めよ。ただし、需要家端からの逆潮流は1 000kW、力率は1(分散型電源、負荷設備ともに1)であり、高圧配電線は当該需要家のみの専用線とし、1線当たりの抵抗$R$及びリアクタンス$X$はそれぞれ3Ω及び$3\sqrt3$Ω、変電所端の線間電圧は6.6kVで一定とする。

回答・解説

■■■(1)■■■

この問題のポイントは、逆潮流の形で、通常の送配電線とは異なり電流が逆向きに流れているため、ベクトル図の書き方として一瞬迷ってしまう点です。

こういった問題を解く際のポイントは、逆潮流が生じている配電線の電圧降下に関する式(1)を導いた後、式(2)のように左辺に送電端電圧、右辺に受電端電圧(基準電圧)となるように式変形することです。

式(2)を導くことができれば、あとは数式に沿って、そのままのベクトル図を描けばOKです。

配電線に逆潮流が生じており、

$$\dot{E_r}=\dot{E_s}+R\dot{I}+jX\dot{I} \tag{1}$$

となっている。

ベクトル図として$\dot{E_r}$を基準にする必要があるから、式(1)を変形して、

$$\dot{E_s}=\dot{E_r}-R\dot{I}-jX\dot{I}\tag{2}$$

となる。

以上より、$\dot{E_r}$を基準としてベクトル図を描くと、解図1の通りになる。

解図1

■■■(2)■■■

先に回答の方針を説明します。

■手順①

緑の三角形について、

  • $E_s$は既知
  • $X$は既知
  • $I$は$\frac{有効電力}{3×E_r}$

となるので、三平方の定理を適用すれば、未知数$E_r$のみで赤のベクトルの長さが導けます。

手順②

赤のベクトルが未知数$E_r$で示され、さらに$R$も$I$も既知であることから、ベクトルの代数和が$E_r$となります。

これによって、$E_r^2$に関する二次方程式を立式し、$E_r^2$の解を得て、その平方根$E_r$が受電端電圧になり、答えを導けます。

■手順①に相当

分散型電源が配電線に流す電流は、逆潮流が1 000kW(三相分であることに注意)、力率1、受電端電圧(相電圧)$E_r$[kV]より、

$$I=\frac{1000}{3Er}\tag{3}$$

これより、$\dot{E_s}$の虚部は、

$$Im\left[\dot{Es}\right]=XI=3\sqrt{3}×\frac{1000}{3Er}=\sqrt{3}×\frac{1000}{Er}\tag{4}$$

である。

以上より、$\dot{E_s}$の実軸成分は、

$$\begin{align}
Re\left[\dot{E_s}\right]&=\sqrt{E_s^2-\left(XI\right)^2}\\
&=\sqrt{\left(\frac{6.6}{\sqrt3}\right)^2-\left(\sqrt3\times\frac{1000}{E_r}\times\frac{1}{1000}\right)^2}\\
&=\sqrt{\left(\frac{6.6}{\sqrt{3}}\right)^2-\left(\sqrt{3}×\frac{1}{Er}\right)^2}[\rm{kV}]\tag{5}
\end{align}$$

となる。

■手順②に相当

ベクトル図より、

$$Er=Re\left[\dot{E_s}\right]+RI\tag{6}$$

であるから、

$$\begin{align}
E_r&=\sqrt{\left(\frac{6.6}{\sqrt3}\right)^2-\left(\sqrt3\times\frac{1}{E_r}\right)^2}+3\times\frac{1000}{3E_r}\times\frac{1}{1000}\\
&=\sqrt{\left(\frac{6.6}{\sqrt{3}}\right)^2-\left(\sqrt{3}×\frac{1}{Er}\right)^2}+\frac{1}{Er} \tag{7}
\end{align}$$

これを解くと、

$$E_r^4-16.52E_r^2+4=0\tag{8}$$

解の公式より、

$$\begin{align}
E_r^2&=\frac{16.52\pm\sqrt{{16.52}^2-4\times1\times4}}{2\times1}\\
&=
\begin{cases}
0.2457876245 \\
16.2742123755
\end{cases}
\tag{9}
\end{align}$$

ここで、$E_r^2=0.2457876245$は不適であるから、

$$Er=4.03413093187\left[\rm{kV}\right]\tag{10}$$

線間電圧$V_r$にすると、

$$\begin{align}
V_r&=\sqrt{3}E_r\\
&=\sqrt{3}×4.03413093187\\
&=6.98711477399\left[\rm{kV}\right]\tag{11}
\end{align}$$

となる。

(答)6.99[kV]